2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a Blue Carbon Ecosystem Model in Mangrove Forests and Evaluation of Long-Term Carbon Sequestration
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21J23067
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| Allocation Type | Single-year Grants |
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
中村 航 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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| Keywords | マングローブ / CO2 / 全溶存無機炭素 / 全アルカリ度 / ブルーカーボン |
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| Outline of Annual Research Achievements |
マングローブをはじめとするブルーカーボン生態系は大気CO2の吸収源であり，土壌内部に100年から1000年スケールで炭素を貯留するため，気候変動の緩和策としての活用が期待されている．近年では，土壌内部で無機化され水域へ流出した炭素も長期的に海洋に留まることが予想されるため，新たな吸収源として注目を浴びている．本研究では，世界で最もマングローブの種の多様性が高く分布面積が大きいインド太平洋地域の分布北限に位置する我が国のマングローブ林を対象に，土壌に堆積した有機物の無機化と水域への流出に着目し研究を実施している．
2021年度，2022年はともに石垣島吹通川河口域にて40日以上にわたり現地に滞在し調査を実施した．調査では，マングローブ林の前面に観測台を設置し，係留系による水質の連続観測と大潮・小潮日の24時間の時系列採水，土壌内部の間隙水の採水，大潮の上げ潮・下げ潮時の海草・サンゴ礁域での空間的な採水を実施した．2021年度は，我が国のマングローブ林を対象に初めて大潮から小潮にかけてのマングローブ水域でのCO2濃度の連続観測に成功した．本観測の成果は日本地球惑星科学連合大会（JpGU2022）にて学生優秀発表賞に選出され，現在は国際誌に投稿し査読中である．2022年度は，マングローブ生態系内での現象からさらに視野を広げ，亜熱帯域で連続した景観を形成するマングローブ，海草，サンゴ礁の相互作用について研究を進めており，マングローブ水域の30.4%，海草・サンゴ礁域での9.3%がマングローブ土壌から再溶出した間隙水が循環していることが明らかになった．本研究成果は第70回日本生態学会全国大会にて物質循環分野の最優秀ポスター賞を受賞し，国際誌のへ投稿に向けて準備を進めている．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は，マングローブ土壌内部の無機化に伴う全溶存無機炭素（DIC）と全アルカリ度（TA）の変動及び，マングローブ林から流出した無機炭素と栄養塩の海草・サンゴ礁域での循環に着目し，石垣島吹通河口域にて約1か月間の現地調査を実施した．調査では，マングローブ林の前面に観測台を設置し，係留系による水質の連続観測と大潮・小潮日の24時間の時系列採水，土壌内部の間隙水の採水，大潮の上げ潮・下げ潮時の海草・サンゴ礁域での空間的な採水を実施した．上げ潮時には海草・サンゴ礁域での影響を受けた海水が流入し，下げ潮時にはマングローブ土壌の影響を受けた汽水が流出していると仮定し，ラジウム同位体の混合モデルを解いたところ，マングローブ水域の30.4%，海草・サンゴ礁域での9.3%がマングローブ土壌から再溶出した間隙水が循環していることが明らかになった．土壌内部の無機化に着目すると，土壌内部のTAとDICの濃度は，土壌冠水時にはほぼ1:1であったが，干出時にはDICがTAを上回っており，冠水の有無により無機化経路が変化していることが示唆された．また，土壌冠水時の表面からのTAとDICフラックスは常にDICの方が高く，土壌冠水時には水中にマングローブ土壌の表層由来の無機炭素が大量に供給されていた．流出した無機炭素の沿岸海域での再同化を検証するために，沿岸海域に繁茂する代表的な5種類の海草と，2種類のサンゴ骨格を採取し，東京大学大気海洋研究所の高解像度環境解析研究センターにて，放射性炭素同位体の測定を実施した．結果は現在分析中だが，マングローブ土壌内部で分解され，海域に流出した無機炭素が再び沿岸海域の生態系内で同化される証拠となることが期待される．
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| Strategy for Future Research Activity |
2023年は，研究課題の最終年度にあたるため，研究テーマの取りまとめを実施する．2021年度，2022年度の調査で潮位振幅の異なる状況でのマングローブ土壌からの無機炭素の流出と水域での振る舞い，また隣接する生態系である海草やサンゴ礁域への影響について明らかになった．2023年度は，マングローブの生育する立地や土壌堆積物の特徴を明らかにするため以下の3点に関して調査を実施する．
①前浜干潟に形成するマングローブの林からの無機炭素の流出過程について：これまでのマングローブ土壌から水域への無機炭素の流出に関する研究は，感潮河川沿いに形成するマングローブ林で実施しており，干潮時には干潟により海域と分断される前浜干潟に形成するマングローブ林での報告例は存在しなかった．2023年度は西表島由布島対岸のマングローブ林にて，調査を実施することで前浜干潟に形成するマングローブ林での水域への無機炭素の流出特性に関して明らかにする．
②マングローブの規模の異なる河川での全溶存無機炭素（DIC）と全アルカリ度（TA）の特性について：本研究は，主に石垣島吹通川河口域に生育するマングローブを対象に実施してきたが，無機炭素の流出特性や，CO2の大気への帰化の過程はマングローブ林や河川の規模により異なることが予想される．インド太平洋地域の北限における，無機炭素流出の挙動を一般化するため，西表島と石垣島に生育するマングローブ林に対し包括的な調査を実施し，河川を通じた水域への無機炭素流出特性を明らかにする．
③土壌コアの有機物含有量と堆積年代の推定について：石垣島吹通川河口域の土壌コアを対象に，有機物含有量と放射性炭素同位体（Δ14C）の測定を実施予定である．土壌コアのΔ14Cの鉛直分布と，水域へ流出した無機炭素のΔ14Cを照らし合わせることで，現在最もアクティブに分解されている層を推定する．
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