視聴覚特徴量に基づく感性的価値の脳情報処理機構の解析

2022 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21J23151
• Allocation Type: Single-year Grants
• Research Institution: The University of Tokyo
• Research Fellow: 小川 成美 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
• Project Period (FY): 2021-04-28 – 2024-03-31
• Keywords: 視覚 / 聴覚 / 特徴量 / 脳波 / 感性的価値

Outline of Annual Research Achievements

私たちは，視覚情報のみから，外界に存在する様々な物体に対して心地よさや気持ち悪さなど様々な感性的価値を判断することができます．このような視覚モーダルにおける価値判断を支える脳情報処理機構の一端を明らかにすることを目指し，昨年度の検討に引き続いて，心理物理学実験・脳波解析・画像特徴解析を組み合わせた検討を行いました．本年度の研究では，以下の2点について進捗を得ました．(1)表面画像に対する感性的価値(心地よさ・気持ち悪さ・不快感)の判断に影響を及ぼす画像特徴量を明らかにするため，行動実験で提示刺激とするための画像の生成と選別を行いました．候補となった刺激は，実際の自然物や人工物の表面を写した画像，色特徴を含む画像統計量をパラメトリックに操作した人工のバンドパスノイズやテクスチャでした．(2)様々な自然表面画像に対する感性的価値(心地よさ・気持ち悪さ)とそれらの画像が持つ特徴量が，画像によって引き起こされる電位変化とどのような関係にあるのかについてを逆相関解析の手法を応用して分析しました．昨年までの解析手法に加えて新たな検討を行った結果，後頭葉において表面画像の感性的価値に関連する脳波成分を抽出し，この成分が，感性的価値と関連深い複数の画像統計量に対する神経応答を由来としている可能性を発見しました．またここで関連があるとされた画像統計量は，以前のバンドパスノイズを用いた研究でも気持ち悪さを引き起こす要因であると指摘されたものと類似の画像特徴でした．この結果は，この画像統計量が，人工的な画像だけでなく実際の自然画像でも感性的価値への影響を持つことを示していると言えます．

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の計画にあった通り，視覚誘発電位と画像統計量，主観的な感性的価値の三者関係の解析を完了させ，感性的価値に関連する脳波成分が，実際のところ特定の画像統計量に対する神経応答の重ね合わせであった可能性を明らかにしたため．また，感性的価値を説明する画像統計量の特定を目指した実験の準備を大幅に進めることができました．

Strategy for Future Research Activity

今後は，視覚誘発電位と画像統計量，感性的価値(心地よさ・気持ち悪さ)の三者関係の解析結果から，感性的価値判断と刺激の特徴量との関係，神経基盤についてのより詳細な考察を行い，それらの結果の総括を目指します．また，検討対象とする刺激を自然表面画像などの視覚刺激だけでなく，聴覚刺激にまで拡張するための準備を進めます．