2021 Fiscal Year Annual Research Report
概日リズムのヘテロ性と相互作用:数理的手法に基づく定量と機能の解明
Project/Area Number |
21J23250
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 絵美理 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 概日リズム / 数理モデリング / 結合振動子 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の概日時計は複数の時計遺伝子が互いに発現を制御するフィードバックループによって駆動されており、個々の細胞は自律した概日時計を持つ。植物個体において、恒常条件下では概日時計の時刻情報が細胞ごとにばらばらになる脱同期状態になることが明らかになっている。これは周期などの性質が細胞ごとに異なる(ヘテロ性がある)ことに起因する。本研究の目的は、植物における細胞レベルでの概日リズムの実験データをもとに、数理モデリングや数値シミュレーションを通して、細胞ごとのヘテロ性や細胞間における相互作用を定量化する手法を確立し、ヘテロ性の意義を解明することである。令和3年度では、1)振動子集団の集団秩序度の時系列データからその振動子の固有振動数やばらつきを推定する手法の開発と2) ウキクサにおいて、細胞間で比較的高い同期状態を維持するCaMV35S::PtRLUCレポーターによる細胞発光リズムの解析に取り組んだ。1)では、振動数のばらつきが大きく結合強度が弱くて脱同期しやすい振動子集団を考え、この集団秩序度の時系列データから、振動数分布や結合強度を推定できるかという問題に取り組んだ。この問題は植物の不均一な細胞概日時計から着想を得ている。弱結合するリミットサイクル振動子集団のモデルの数値計算によって得られる秩序変数の時系列に対して、蔵本モデルの秩序変数をフィッティングすることで固有振動数の標準偏差と結合強度を推定した。2)では、時計遺伝子の過剰発現エフェクターの共導入実験や高張液処理下でのCaMV35S::PtRLUCの発光リズムを解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は振動子集団の集団秩序度の時系列データからその振動子の固有振動数やばらつきを推定する手法の開発に取り組んだ。振動数のばらつきが大きく結合強度が弱くて脱同期しやすい振動子集団を考え、この集団秩序度の時系列データから、振動数分布や結合強度を推定できるかという問題に取り組んだ。弱結合するリミットサイクル振動子集団のモデルの数値計算によって得られる秩序変数の時系列に対して、蔵本モデルの秩序変数をフィッティングすることで固有振動数の標準偏差と結合強度を推定したところ、推定された固有振動数は振動子集団の固有振動数の標準偏差にほぼ一致し、推定された結合強度は、結合強度に関係するパラメタとほぼ比例するという結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には、振動数のばらつきが大きく結合強度が弱くて脱同期しやすい振動子集団を考え、この集団秩序度の時系列データから、振動数分布や結合強度を推定できるかという問題に取り組んだ。本年度は、集団秩序度の時系列が得られないようなときでも、平均場の時系列のみから、同様の推定をすることができるか検討する。また、ウキクサにおいて、細胞間で比較的高い同期状態を維持するCaMV35S::PtRLUCレポーターによる細胞発光リズムについてもさらなる解析をすすめる。
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