2021 Fiscal Year Annual Research Report
ウェブ集合知のリテラシー支援のためのナラティブ型可視化手法の研究
Project/Area Number |
21J40074
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 真喜子 東京大学, 情報学環, 特別研究員(RPD) (00910770)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 情報可視化 / 集合知 / 情報検索 / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、ウェブ集合知で一般ユーザが「正しい情報を得る」ためのリテラシー支援である。本研究ではウェブ集合知上のコメントに特徴語抽出や感情解析等を施したデータセットに対し、ユーザの視線を「情報を正確に読み取るための手順」に誘導するナラティブ型可視化アプリケーションの開発を試みる。さらに小学生・中学生を対象とするワークショップを実施し、実世界のキュレーションをアプリケーションに複合させることに取り組む。本年度は、アプリケーションデザイン要件設定とプロトタイプの作成、ワークショップデザインのための方針をまとめることに注力した。 まず、「言語間の SNS 利用および集合知の特性調査」「Covid-19に関するウェブ情報の推移と、ウェブ集合知が実世界に影響を与えた事例の原因と特徴の調査」「2011年以降にデマ対策として一般化した手法の抽出とその効果の検証」「教育現場におけるメディア活用課題の調査」を行った。調査を行う過程では、WebAPIを用いてデータを収集、特徴語抽出や環状解析などのNLPプログラムを開発し、次年度に開発するためのデータセットを用意した。これらの取り組みによって、アプリケーションの開発において「言語の違いによる文化情報の不足・ 精度の低下・社会環境の影響を俯瞰するデザイン」「情報検索に多用される注目キーワードの不継続性と突発性への意識化を促すデザイン」「ストーリーテリング型の情報提示を添えたナラティブ型検索を実現するデザイン」の3つの要素を実現する必要性が導き出され、これらの要件を満たす2種類のプロトタイプを作成した。さらに小中学校の教師に、「児童の情報の取り扱いにおけるニーズ」を聞き取りした結果、集合知活用リテラシー向上のためには、その準備段階として情報モラルやインターネットの危険性についてガイダンスする必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の調査を行い、次年度以降のアプリケーション開発とプロトタイプの作成、ワークショップデザインの方針をまとめた。 ①話題の言語間比較による特性調査:TwitterをはじめとするSNSとウェブニュースを中心に日本語・英語・西語の検索結果を俯瞰し、日本語の集合知の特徴と課題を探った。結果、言語の限定は、情報獲得において 1. 文化情報の不足 2. 精度の低下 3. 社会環境の影響 の3つの弊害があることがわかり、これらを補うデザインが必要があることが明らかになった。 ②Covid-19に関するウェブ情報の推移と、ウェブ集合知が実世界に影響を与えた事例の原因と特徴の調査:国立情報学研究所の北本氏による新型コロナウイルス感染症ニュース分析アーカイブをデータソースとして活用した。「注目されたキーワード」に着目したところ、キーワードの不継続性と突発性が明らかになり、誤った情報が拡散する一因であると仮説を立てた。 ③2011年以降にデマ対策として一般化した手法の抽出とその効果の検証:教育現場と一般社会に普及した手法を調査した結果、民間によるファクトチェックサイトの普及と情報モラルの訴え、及び文部科学省及び総務省のメディア情報リテラシー教育の活性化が明らかになった。リテラシー支援を目指すナラティブ型アプリケーションのデザインにおいて、「ストーリーテリング型」の操作説明を加える必要があると見出した。 ④プロトタイプとして、SNS情報へ感情色彩を付与する可視化プログラムと、「警視庁」の基準を採用した、紛らわしい情報を抽出するアプリケーションを開発した。 ⑤教育現場におけるメディア活用の課題の調査:児童にみられるメディア活用の現状と問題を小中学校教員に聞き取り調査を行ったところ、リテラシーに関する補足授業と、探究学習における情報活用に関心を持つことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
・本年度で得たフィードバックを元に、可視化アプリケーションに求められる表現をデザインし、Pythonとp5.jsを用いて実装する。 ・本研究は、学術的知見とアート的な表現の両立を追求する。アプリケーション制作について「情報系(情報処理学会)」「情報リテラシー系(電子情報通信学会または情報処理学会-人文科学とコンピュータ研究会-)」「可視化系(日本バーチャルリアリティ学会)」の 3 タイプの学会で発表 し、フィードバックを得る予定である。 ・申請者の受入希望研究室が積極的に行なっているAI を用いたワークショップデザインと、同研究施設内研究室で探求されているメディア実践の知見を参考にワークショップを企画する。 ・本年度と次年度の研究成果を学会において発表する。
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