2021 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカルフォトニクスによる次世代半導体レーザの研究
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21J40088
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 夏子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカルレーザ / 半導体レーザ / トポロジカルフォトニクス / PT対称性 / 大面積レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年, 自動運転をはじめとする次世代技術や超精密加工への応用に向け, 半導体レーザの更なる高輝度化が要求されている. レーザの高出力化に伴い, 多モード発振や輝度の劣化が課題となるが, 本研究ではトポロジカル状態を用いたトポロジカルレーザを実現し, 半導体レーザの性能に革新的進化をもたらすことを目指している. 当該年度では, 前年度の研究結果に基づき, 1次元系に現れるトポロジカル状態(0次元エッジ状態)を用いたトポロジカルレーザの高安定単一モード動作条件および作製誤差の影響をより詳細に解析した. 単一モード動作安定性の指標として, トポロジカルモードとその競合相手となるバルクモードのレーザ発振しきい値利得差を評価した. レーザの観点から決定的に優位とされるトポロジカル状態の単一モード性は, トポロジーに守られた条件下のみで保証されるが, 実デバイスへの応用を検討する際はトポロジカル状態を保護する対称性を破る揺らぎは避けられず, この影響の大小は自明ではなかった. 想定できるいくつもの揺らぎに対して, エッジ状態の単一モード動作をどのような条件下で保持できるか詳細に解明し, 当該成果を学術雑誌(Nanophotonics)にて発表した. また, エッジ状態の単一モード動作の高安定化を図るため, 上記模型を拡張してビーム形状を制御する模型を解析した. ビーム形状を適切に制御することで, 上記模型よりも高安定化が期待できることを明らかにし, 本成果を応用物理学会にて口頭発表した. さらに, 次年度の計画を繰り上げ, 2次元高次トポロジカル絶縁体を用いたトポロジカルレーザ構造の探索を開始した. 次年度, 本研究を詳細に解析する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①前年度の研究結果に基づき, 1次元結合共振器アレイを用いた0次元トポロジカルエッジモードレーザの高安定単一モード動作条件および作製誤差の影響をより詳細に解析し, 当該成果を学術雑誌にて発表した. 数値解析には, 強束縛近似の1つであるSu-Schrieffer-Heeger (SSH)模型を用い, 各モードのレーザ発振しきい値を評価して高安定単一モード動作環境を特定した. 本模型におけるトポロジカル状態の単一モード性は, カイラル対称性によって保証されることが知られているが, 実デバイスへの応用を検討する際, カイラル対称性を破る揺らぎの存在は避けられない. そこで, 想定できるいくつもの揺らぎに対して, エッジ状態の単一モード動作をどのような条件下で保持できるか詳細に解明し, 評価した.
②エッジモードの単一モード動作の高安定化を図るため, 上記SSH模型を拡張し, サイト間の結合定数を空間的に徐々に変調した単一モードトポロジカルレーザの解析を行った. 半導体アレイレーザでの実装を想定し, 単一の半導体レーザには出力限界があることを考慮しつつ, エッジモードの発振動作安定性をSSH模型の解析と同様にバルクモードとのしきい値利得差の観点から評価した. SSH模型におけるエッジモードの強度分布は釣鐘型となるのに対し, 当該モデルではガウス型となり, より安定な単一モード動作が可能になると期待される.
③次年度の計画を繰り上げ, 2次元高次トポロジカル絶縁体を用いたトポロジカルレーザ構造の探索を開始し, 次近接サイト間結合を取り入れた2次元SSH模型および四重極トポロジカル絶縁体を比較検討した. 各モデルにおける0次元コーナーモードのエネルギー特性から, 四重極トポロジカル絶縁体におけるコーナーモードがよりロバストであると期待される. 次年度, 本研究を詳細に解析する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は, 前年度に前倒しで開始した2次元系におけるトポロジカルレーザの構造探索を行う. ロバストな0次元コーナー状態が期待される四重極トポロジカル絶縁体を用いて, コーナー状態のモード分布を解析し, 当該状態が選択的に発振する利得と損失の配置や格子定数, 空孔サイズ等の条件を探索する. 1次元系の解析と同様に, コーナー状態とバルクモードのしきい値利得差を用いて, 単一モード動作安定性を評価する. 系を高次に拡張することで, 数値計算量の大幅な増加が生じるため, 高性能な解析用コンピュータ(新規購入)を用いて, mathematicaによる数値計算を行う.
また, 1次元系で得た知見の中に, エッジ状態のビーム形状をフラットトップに制御してもなお, バルクのparity-time(PT)対称性の破れによるバルクモードの発振が生じ, しきい値利得差の低下に繋がることが含まれる. しきい値利得差を改善するため, エッジモードにPT対称性の破れを引き起こす新たなトポロジカルレーザデバイス設計を模索する.
さらに, フラットバンドを有することで近年大きく着目されている2原子層(バイレイヤー)に利得と損失を導入したモデルを検討する. 大面積レーザへの応用を目指して各モードのエネルギー特性を解析し, デバイス構造の特定を行う.
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Research Products
(4 results)