2022 Fiscal Year Annual Research Report
同所的な近縁種の有無がシロチョウの性フェロモン進化に与える影響
Project/Area Number |
22J00088
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 悠 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | シロチョウ / フェロモン / QTL / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる本年度は以下を実施した。 (1)蝶の飼育、食草の栽培体制の構築(2)QTL解析のための交配実験(2)トランスクリプトーム解析による候補遺伝子の同定(4)ゲノム編集環境の構築 (1)については、蝶の飼育スペースと食草の飼育スペースについてほぼ環境構築を完了したが、冬季に害虫が侵入する事態に見舞われ、それ以降は食草の供給、蝶の飼育ともに安定させることができなかった。その中でも害虫侵入前は数多くの蝶を飼育することができ、ある程度交配実験を進めることができた。(2)の交配実験については、本年度は計3回行うことができた。しかしながらどの場合もF2世代の孵化率が非常に低く、F2の成虫を十分量得ることができなかった。次年度は異なった個体群を利用することや、抗生物質を投与し、一度ヴォルバキア等の感染の可能性を排除することを予定している。(3)のトランスクリプトーム解析については、注目する2種のシロチョウについて、雌雄のサンプルを用いて解析を行った。これによりサンプル間で予想される発現パターンを持った候補遺伝子を複数発見することができた。これらの遺伝子のいくつかについては、すでに異種発現系により発現させ、機能解析が完了している。今後、発見できたすべての候補遺伝子について、活性測定を行うことで原因遺伝子の特定を行うことができると考えている。(4)のゲノム編集環境の構築については、予備実験として、シロチョウの卵へのCas9プロテインのインジェクションを行い、目的の遺伝子について突然変異の導入に成功した。今後はこの方法でより多くの突然変異体を得て、ホモノックアウトラインを固定することにより、より詳細に原因遺伝子の機能について知見を得られると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度はシロチョウの飼育設備の構築を行うことと、分析方法の確立に尽力した。飼育設備の確立としては、野外から野生系統を導入し、長期間に渡り累代飼育することができた。しかしながら当初予定していたQTLのための交配実験はF2の個体の孵化率が低かった影響で本年度は完遂できなかった。これは次年度に個体群を変更し再度交配を試す予定である。交配実験は十分量の幼虫が得られたなかったものの、雌雄や部位特異的なトランスクリプトーム解析から候補遺伝子の絞り込みを行っており、いくつかの候補についてその機能解析も進んでいる。これに加えて、シロチョウにおいてゲノム編集を行うための環境構築を完了することができ、実際にいくつかの重要な候補遺伝子についてはノックアウトの実験を始められているため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はシロチョウの飼育環境整備とQTLのための交配実験に多くの時間を割いたため、当初予定していた野外集団における二種のシロチョウの表現型の確認を全国的に行うことができなかった。次年度は計画どおり野外におけるサンプリングと表現型の記載をすすめる。これと並行して、QTLのための交配実験を引き続き進める予定である。F2の孵化率が上がらず、個体数が多く得られたなかった場合を想定し、部位別、種別のRNA-seqを追加で行い、その発現パターンから原因遺伝子の絞り込みを行っていく予定である。いくつかの最終候補については、機能解析と並行してCRISPRによるノックアウトを行い、in vivoの機能を解析する予定である。
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