2023 Fiscal Year Annual Research Report
人馴れが生態系にもたらす新たな脅威:大規模実験による群集規模の捕食リスク評価
Project/Area Number |
22KJ0721
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 健太 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 都市生態学 / 人馴れ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、急速に進行する都市化や自然観光業の急激な人気上昇により、人と野生動物の接触が増えている。多くの生物が、人間を避けて行動する一方で、リスやスズメといった一部の生物は、人間に馴れることで人間の生活圏を上手く利用している。このように、人馴れは人為攪乱に対する適応的な応答だと捉えられている一方で、近年過度な人馴れは生物の根本的な警戒心を低下させることで、捕食リスクを高める可能性が指摘され始めた。また、人馴れは人間との接触が見られる特定の個体や生物種で見られるだけでなく、個体間の相互作用や種間の相互作用を介して集団や群集に広く伝播する可能性がある。しかし、人馴れに関する本リスクを検証した研究はなく、生物多様性保全の観点から、人馴れが種間相互作用を介して、群集全体に広がるリスクを検証する必要がある。そこで本研究では、野生動物の人馴れが、他種に伝播することで、人馴れに伴う捕食圧の上昇が群集規模で生じる可能性を検証する。北海道のエゾリスとカラ類を用いて、人への応答と根本的な警戒心を評価した。また、複数の都市の複数の公園で、複数の生物種を対象に人馴れと根本的な警戒心を評価した。現在までのデータをまとめたところ、エゾリスとカラ類において、人馴れが進んだ個体では根本的な警戒心も低下している傾向が見られた。また、エゾリスの人馴れが進行している集団(公園)では、カラ類においても人馴れの進行している傾向が検出されている。今後、種間を超えた人馴れの相関が、種間相互作用を介して生じているのか、それとも各種が個別に人間との接触により人馴れが生じているのかを明らかにする必要がある。本研究結果は、人馴れが単なる個体内もしくは、種内の行動変化ではなく、群集規模で生じる現象であり、群集規模での捕食者への脆弱性を高める可能性を示している。
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