2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J00337
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日浦 健 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 反応速度論 / ゆらぐ流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,予定していた生体内環境中のレアイベント解析の例題として,非平衡環境中の反応速度論を取り上げた.周囲の溶媒環境が非平衡に駆動されている状況を第二種揺動散逸関係の破れとして定式化し,ノイズと散逸が釣り合わないような非マルコフな一般化ランジュバン方程式で記述される反応座標に対する反応速度の解析的な表現を得た.ただし,この表現を具体例で評価するためには高次元空間での非平衡定常分布を計算する必要があり,今のところ一般論を超えた結果が得られず,論文公表には至っていない.
また,研究課題とは少し外れるが,対称性の破れを伴う時空間ダイナミクスである結晶相のゆらぐ流体方程式のミクロ力学からの導出を行った.この結果は,現在論文が投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在のところ,非平衡反応速度の一般的な表現に留まっており,新たな現象や整理の軸の提示,それを用いた反応速度の制御といった,非平衡現象への新鮮な視点の提供ができず,論文の公表に至らず不満が残る.
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Strategy for Future Research Activity |
非平衡反応速度は自由エネルギーランドスケープに非局所的に依存しているため,平衡環境での反応速度とは対照的に,反応速度の表現の中に,直感的に理解することが困難な量が含まれている.そこで,状況を限定することでこの量の振る舞いを理解できないか,および,過剰熱のような熱力学的な量による普遍的な制限があるか,といった視点から検討していく. 結晶相のゆらぐ流体力学に関しては,非平衡環境下で流体場と変位場の相互作用によってどのような現象がありえるかを調べる予定である.
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