2022 Fiscal Year Annual Research Report
イオンチャネル型グルタミン酸受容体の機能解析に資するカイトセファリンの生合成研究
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22J00356
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前野 優香理 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 真菌 / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイトセファリン(KCP)は真菌の一種により生産される二次代謝産物であり、3つのアミノ酸が炭素-炭素結合で連結した他に例の無いユニークな化学構造を有する。KCPは哺乳動物の記憶や学習などの高次機能に関与するイオンチャネル型グルタミン酸受容体のサブタイプの一種、NMDA型受容体の選択的なアンタゴニストとして作用し、神経保護薬としての可能性を秘めているが、生産菌による生産量がきわめて低く、十分な生理活性試験が行われていない。本研究では、稀少なKCPの安定供給を目的として、生産菌からKCPの生合成遺伝子を同定し、Aspergillus oryzaeへの異種発現によるKCP大量生産系の構築を目指す。 今年度は以下の①から③の実験を行った。①安定同位体標識化合物の取り込み実験、②生産菌のゲノム解析、③Aspergillus oryzaeを用いた異種発現 ①では、安定同位体標識したアミノ酸や化学合成した推定生合成中間体を生産菌の培地に添加し、KCPへの変換を確認した。②では、生産菌のゲノム情報から指標となる生合成酵素をクエリ―としてLocal BLAST検索し、ヒットした遺伝子周辺の遺伝子の予想機能を調べ、10個以上の遺伝子から構成されるKCPのBGCを推定した。③ではA. oryzaeを宿主としてKCPの生合成遺伝子と予想される遺伝子群のうち一部を異種発現し、代謝産物を解析した。その結果、予想出発物質から生合成反応が一段階進行したと予想される化合物を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生産菌によるKCPの生産量は極めて低く不安定であることが知られていただが、培養条件を検討することで、質量分析には十分な量の安定的な生産条件を見出すことができた。これにより、安定同位体標識化合物の取り込み実験を行うことができ、推定生合成中間体を見出した。生産菌のゲノム解析の結果、指標としていた酵素がゲノム中に一つだけ見出されたことから、生合成遺伝子クラスターの絞り込みは容易であった。A. oryzaeの異種発現は候補となっている遺伝子数も多いため、全ての遺伝子をノックインすることに難航した。総じて、今年度の進捗状況はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ノックインを行っていない遺伝子を全てA. oryzaeにノックインする。得られた形質転換体について数種の培養条件で代謝産物解析を行い、野生株では見られれない新規代謝産物を探索する。検出された代謝産物を単離、精製し、NMRでその化学構造を決定することで、KCPの生合成経路を予測していく。
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