2022 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧下電気伝導度測定による下部マントル組成の解明
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22J00928
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥田 善之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 下部マントル / ブリッジマナイト / 電気伝導度 / 化学組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
下部マントルは地球体積の半分以上を占める最大の層であり,その化学組成・鉱物組成は地球全体の化学組成を支配する.下部マントルにおけるこれらの鉱物の量比および組成はこれまで高温高圧実験により得られる鉱物の地震波速度と地球内部の地震波速度分布観測を比較することで推定されてきたが,そのような制約のみでは下部マントルの鉱物の量比および組成の決定には不十分である.地震波速度と独立した物理量である電気伝導度は下部マントル鉱物の種類および組成に敏感であるため,地球内部の電気伝導度構造と高温高圧実験により得られる鉱物の電気伝導度の比較を行うことで,地震波の情報だけでは決まらなかった下部マントルの鉱物の量比および組成を強く制約することができる.そのため本研究では下部マントルを構成する各鉱物の鉄やアルミニウム濃度(x),および圧力(P)温度(T)を振った系統的な電気伝導度測定を行い,観測と比較することで地震波のみでは得られなかった下部マントルの鉱物量比・組成を精密に決定することを目的とする. 本年度は研究計画書の通り以下の試料について高温高圧下電気伝導度測定を行った. 1.下部マントル第一主要構成鉱物ブリッジマナイトの電気伝導度測定 鉄のみを含む試料:0 mol%, 10 mol%, 鉄とアルミを含む試料:ともに10%,の3組成について,70万気圧,3000 Kまで 2.下部マントル第二主要構成鉱物フェロペリクレースの電気伝導度測定 鉄を20%含む試料について,47万気圧,3000 Kまで
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね研究計画調書の通り測定を行うことができた.ブリッジマナイトの測定結果から,試料の組成の違いによる電気伝導度の違いを観察することができた.また,フェロペリクレースの測定についても主目的であった鉄のスピン転移の影響を観測することができた.目標達成温度圧力のうち温度は目標以上の温度で測定を行うことに成功した.しかし,課題として圧力については最下部マントル圧力下での測定は行うことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の測定結果から下部マントルの中部までの各鉱物の電気伝導度の組成依存性を得ることに成功している.そこで今後は本年度測定を行った下部マントル構成鉱物に対して測定圧力を100万気圧まで上昇させる.また,まだ測定を行っていない最下部マントル構成鉱物であるポストペロブスカイトについての測定も行う. オスロ大学のMohn博士による理論計算の結果と比較を行うことで,各鉱物の電気伝導メカニズムの詳細を明らかにする.また,来年度は得られた結果を用いて下部マントルの鉱物の量比および組成の計算を行う予定である.
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