2022 Fiscal Year Annual Research Report
圧力スケールの構築に基づいた高温高圧その場分光測定による沈み込み帯流体の構造解明
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22J00992
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 菜緒子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 外熱式ダイヤモンドアンビルセル / ラマン分光 / ジルコン / 圧力スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
高温高圧水溶液の分子振動特性にアプローチできる外熱式ダイヤモンドアンビルセル (DAC) 装置を用いたその場分光測定実験を実施するために、高温下でさまざまな水溶液と反応性が低いジルコンの圧力スケールを構築した。本研究では、先行研究の1.2 GPaという高温下での測定条件を超え、最高773 K、9 GPaまで合成ジルコンのラマンスペクトルを測定した。高温下で試料の圧力を決定するために、熱水DAC実験でよく用いられる試料室を等容と仮定して水の状態方的式から推定する手法を用いずに、その場粉末X線回折測定を同時に行うことで金の状態方程式から計算した。得られたラマンスペクトルを解析し、ジルコンの複数のラマン活性モードの波数の温度・圧力依存性を求めた。それらの結果をジルコンに関する既存の熱膨張率、圧縮率と組み合わせることで、波数の温度依存性に対する純粋な体積と温度の寄与を評価することができた。さらに、ジルコンのSiO4四面体構造の逆対称伸縮振動に注目すると、473-673Kにおける波数の圧力依存性は室温での圧力依存性とよく一致することがわかり、高温高圧下で測定した波数は温度と圧力それぞれの影響を組み合わせた式でよく再現された。本研究の成果は、地殻・上部マントルに相当する温度圧力条件において DAC 内試料の圧力決定にジルコン圧力スケールを使用することの利点と信頼性を強調するものである。これらの成果の一部は既に国内で学会発表を行った他、現在国際誌への投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は当初の計画通りに、新しい受入研究機関や高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーにおいて研究遂行に必要な外熱式DAC及び電源装置等のセットアップと高温高圧下その場ラマン分光測定実験を実施し、ジルコンの圧力スケールの校正を完了した。この圧力スケールを用いてさまざまな水溶液の分光学的特徴を温度・圧力・組成の関数として調べるために、ラマン分光用励起レーザーの出力が高く迅速なデータ取得が可能な装置が利用できる米国・カーネギー研究所に令和5年度4月から滞在し、出発物質の作成や実験を実施する準備を終えた。以上の理由から、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
沈み込み帯深部を模擬した系・条件において、構築した圧力スケールを用いて高温高圧水溶液の振動分光スペクトルの系統的取得を試みる。スペクトル解析結果に基づき、水溶液のpHやアルカリ金属元素の種類、アルカリ金属/ケイ素比、温度、圧力の変化に伴うケイ酸塩と水の構造の変化に関する新たな知見を得る。
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