2023 Fiscal Year Research-status Report
衛星ビッグデータを活用した全球陸水熱動態の解明 -気候変動と雪氷圏-
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22KJ0755
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 恵 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2026-03-31
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Keywords | 高解像度 / 水面検出 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
広域での陸水の熱動態については未解明であり、水温変化のモニタリングを達成することを当初目的とした。当初予定課題を進めるうちに陸水域の面積情報及び位置情報が非常に重要となることが分かったので、そちらの焦点に絞って研究を進めている。当該年度では、昨年度から開発に着手した航空写真と水文地形データを用いたベイズ推計による高解像度水面検出のアルゴリズムの改善を行い、より精度良く水面検出を行うことを目指した。また日本の多摩川及び鶴見川流域において、水面検出手法の検証を行った。既存の光学センサの情報を用いた水面検出手法では、近赤外の情報を必要とするのに対し、本手法ではより高解像度のデータが利用可能なRGB情報のみから水面検出を可能とするアルゴリズムの構築を行なった。既存の広域の水面マップの解像度は約30m解像度であるのに対し、本研究は60cm解像度の水面マップ開発を達成し、解像度が著しく向上した。本手法は既存の30m解像度水面マップで解像されていなかった多摩川や鶴見川の支流を解像することができた。またオープンソースクラウド地図でラインとして表現されている支流を面として捉え、ラインデータしか存在しなかった河川の37%に面的情報を付加することができた。高解像度水面マップの開発により、小規模の湖沼や河川についても外形データが利用可能となり、水温変化の解明に繋がる。この結果について水文・水資源学会での口頭発表と英文レター誌Hydrological Research Letterでの論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定課題を進めるうちに陸水域の面積情報及び位置情報が非常に重要となることが分かったので、そちらの焦点に絞って研究を進めており、それについて十分な成果が得られた。本年度は、高解像での水面検出のためのアルゴリズム開発とその検証を行った。その結果、既存の手法の30m解像度からの本手法60m解像度への著しい解像度の向上を達成した。またこれまで面的な情報を持っていなかった小規模な河川について面的情報を創出することができた。これらについて成果をまとめ、学会での口頭発表と英文誌への論文発表を行っており、十分に研究は進展している状況にあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、当初計画のうち水面検出に焦点を当てて研究を遂行する。RGB画像を含む光学センサによる水面検出手法では、植生や雲被覆などの影響を受け、季節的な変化のある水域を含む河川や湖沼の検出に難がある。一方、一部のマイクロ波センサは植生や雲被覆下でも水面検出を行うことができるもののマイクロ波センサ観測に基づいて開発された既存の水面マップのオリジナルの解像度は25kmと粗い。今後はそれらの光学センサや粗い解像度のマイクロ波センサでは捉えることのできない水域に関しても高解像度で面積及び位置情報を創出するために、2022年に打ち上げられ、新たに利用可能となったSWOT衛星画像の解析を行う。SWOT衛星画像は現在100m解像度で処理されたラスタデータが利用可能でありこのデータを利用して、既存の光学センサや粗い解像度のマイクロ波センサでは捉えることのできなかった水面情報の創出を試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度の途中からパリ天文台へ滞在して研究遂行するため渡仏した。渡仏直後は物品の購入先や購入方法について検討する必要があったため、計算機関連の物品の購入を後回しにし、現状の設備で実施可能な研究を優先的に推進したため。今年度は計算機関連の物品の購入とともに、国際学会(オーストリア開催のEGU General Assembly2024等)への参加や協力研究機関との打ち合わせのための国内外の出張(CNES、Paris-Saclay University、イギリスに位置するECMWF、ドイツに位置するMax Plank Institute等)、また得られた成果の論文投稿を予定している。したがって、差額分は物品購入、旅費、論文投稿料費に充る計画である。
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