2022 Fiscal Year Annual Research Report
転写反応場の形成を介したエンハンサー作用動態の超解像ライブイメージング
Project/Area Number |
22J01468
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
川崎 洸司 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | エンハンサー / 転写制御 / ライブイメージング / ショウジョウバエ初期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム中の発現調節領域であるエンハンサーは、標的遺伝子から数十から数百 kbも離れた遥か遠くから転写を活性化できるという特筆すべき性質を持つ。本研究では、転写因子が天然変性領域を介して濃縮された核内微小環境(転写ハブ)に着目する。こうした環境をエンハンサーとプロモーターが共有することで物理的近接を伴わずに転写が制御される、「転写ハブ仮説」を検証する。 本年度は、研究代表者がこれまでに構築してきたライブイメージング手法をもとに詳細な画像解析と実験条件の最適化を目指した。定量的な3次元画像解析を駆使することで、エンハンサー上における転写因子のクラスター形成と転写バーストの経時変化を1細胞解像度かつ個体レベルで捉えることに成功した。一過的に形成される転写因子クラスターの濃縮度は転写バーストの強度と強く相関することが明らかとなった。さらに、転写因子の持つ天然変性領域がハブの形成を促進し、遠位エンハンサーによる転写バーストの誘導効率を上昇させることに機能することが示唆された。 ショウジョウバエの初期胚発生においてモルフォゲンとして働く転写因子Bicoidの天然変性領域をゲノム編集によって人為的に伸長させる系を構築した。その結果、hunchbackをはじめとするBicoid標的遺伝子の転写活性が異常に亢進し、体節構造の形成に異常が生じることが明らかとなった。一分子RNA FISHと免疫染色を組み合わせた解析から、改変型転写因子の異所的な濃縮区画の形成がこれらの転写活性の亢進に関与していると考えられた。これらの結果より、天然変性領域を介した転写因子のハブの形成効率は生体内では厳密に規定されており、正確なエンハンサー活性の発揮に寄与しているという新たなモデルが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに構築してきたライブイメージング手法をもとに、初期胚中の転写バーストの様子と転写因子の動態を同時に観察することに成功した。この観察系により当初の狙いであった転写ハブの形成ダイナミクスの定量的な解析が可能となり、研究を飛躍的に進めることができた。 また、本年度は上記の研究成果について複数の集会で研究発表を行った。そのうち、新学術・学術変革領域合同「若手の会2022」及び日本時間生物学会年会にて優秀口頭発表賞、優秀ポスター賞をそれぞれ受賞し、高い評価を受けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、取得したライブイメージングデータをより詳細に解析するためのパイプラインを構築する。これにより現在までに得られた成果をより解釈可能な定量データとしてまとめる。以上を通して、ここまでに得られた成果を論文として投稿する。
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