2023 Fiscal Year Research-status Report
転写反応場の形成を介したエンハンサー作用動態の超解像ライブイメージング
Project/Area Number |
22KJ0760
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 洸司 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | エンハンサー / 転写制御 / ライブイメージング / ショウジョウバエ初期胚 / 転写バースト |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム中の発現調節領域であるエンハンサーは、標的遺伝子から数十から数百 kbも離れた遥か遠くから転写を活性化できるという特筆すべき性質を持つ。本研究では、転写因子が天然変性領域(IDR)を介して濃縮された核内微小環境(転写ハブ)に着目する。こうした核内環境をエンハンサーとプロモーターが共有することで転写が制御される「転写ハブ仮説」を検証する。
本年度は、これまでに取得したライブイメージングデータのより詳細な解析を実施した。超解像顕微鏡解析から得られた3次元画像データから、エンハンサー上に形成される転写因子VP16のクラスターと標的遺伝子座の空間配置を経時的に追跡することが可能となった。その結果、遠位エンハンサーによる転写バーストの誘導時には一過的にVP16クラスターと標的遺伝子が空間的に近接する様子を捉えることに成功した。さらに、転写因子の持つIDRが分子クラスターと標的遺伝子間の近接確率を高め、より高頻度に転写バーストを引き起こすことに貢献している可能性が示唆された。また、新たに構築した多色蛍光観察システムを用いた解析により、エンハンサー上における単一の分子クラスターが2つの遺伝子によって共有されることで同調的な転写バーストを誘導することを明らかとした。 定量的な画像解析より、同調的な転写バーストが生み出される際には分子クラスターがより濃縮されていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度に行なった詳細な解析により、転写因子の形成する核内クラスターがエンハンサーによる柔軟な転写制御機構に関して重要な役割を果たすという新たな知見を得た。さらに、複数遺伝子の多色蛍光観察系を新たに構築することで転写バーストの協調的な制御機構に関する新たな生命現象を観察することに成功し、当初の計画以上に研究が進展したと考えている。ここまでの研究成果をまとめ、Molecular Cell誌にて報告した。また、本研究で得られた知見を中心にエンハンサーによる遺伝子発現調節機構に関する総説を執筆し、Trends in Cell Biology誌にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究の成果より、転写因子間における多価性相互作用が転写「反応場」の形成を促進することで、遠位エンハンサーによる転写バーストの誘導効率を大きく促進すること見出した。今後の研究では転写因子のIDRを介してエンハンサー領域で濃縮され、機能している分子群を同定する。これにより、転写反応場の形成を介したエンハンサーの機能メカニズムをより高い解像度で理解することを目指す。特に、転写反応の中心的な役割を担うRNAポリメラーゼIIの動態についてライブイメージング解析を行い、転写ハブ・転写バーストとの時空間的な関係性について明らかとする。
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Causes of Carryover |
作製した生物試料の解析に向け、当初の計画にはない事前実験の必要性が生じた。これを解決するために、新たに追加の遺伝子改変動物を作製し、実験条件の検討を実施するために次年度使用額が生じた。
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