2022 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of novel physical properties related to ferroaxial order
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22J11247
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林田 健志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | フェロアキシャル秩序 / 磁気キラル効果 / ドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
【電場誘起磁気キラル二色性の測定】磁気キラル二色性は,有限な磁化を持つキラルな物質に対して,無偏光の光が入射したとき,その吸収の大きさが光の進行方向や,物質のキラリティに応じて変化する現象である。フェロアキシャル物質においては,電場を印加することによってキラリティを誘起することができ,さらに電場の向きを切り替えることでキラリティの制御も可能となる。したがって,フェロアキシャル物質に対して電場と磁場を同時に印加することで,上記のような二色性を発現させることができると期待される。そこで代表的なフェロアキシャル物質であるNiTiO3において,近赤外領域での吸収スペクトルを,電場,磁場印加下で測定したところ,特にNi2+のd-d遷移に対応するエネルギー領域において,大きな電場誘起磁気キラル二色性を観測することに成功した。また,得られたスペクトル構造を解析した結果,Ni2+のエネルギー準位の擬シュタルク分裂が重要な役割を果たしていることが分かった。
【新しいフェロアキシャル物質の探索】新奇なフェロアキシャル物質の開拓のため,データベーススクリーニングによるフェロアキシャル物質の探索を行った。代表的なフェロアキシャル物質として知られるRbFe(MoO4)2と類似した構造を持つglaserite化合物を,化学式の正規表現を用いた探索から抽出し,さらに詳細な対称性判定によるスクリーニングから7個の候補物質を抽出した。その中の一つであるK2Zr(PO4)2について,中性子線回折による構造解析,electrogyrationを用いたフェロトロイダルドメインの観測を行った結果,フェロアキシャル物質に相違ないことが明らかになった。
これらの結果について,国内外の学会で発表を行っている他,論文での公表も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,フェロアキシャル秩序に由来した新規な光学現象である電場誘起磁気キラル二色性を観測することに成功した。さらに,データベーススクリーニングを用いて効率的に物質探索を行うことにより,新たなフェロアキシャル物質であるK2Zr(PO4)2を発見することができた。 また,ETH Zurich のProf. Fiebigグループに5か月間滞在し,第二高調波発生(SHG)を用いた強的秩序の観測実験を行った。その結果,従来観測されていなかったようなドメイン構造の観測に成功したほか,今後のフェロアキシャル秩序の観測にも役立つようなSHG測定のノウハウを身に着けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,新規な強的秩序であるフェロアキシャル秩序を対象とし,【フェロアキシャル秩序の外場制御】,【フェロアキシャル秩序と他の秩序状態のカップリング現象の探索】,【フェロアキシャル物質群の拡充】をテーマとして実験を行っている。この中でも,今後は特に,フェロアキシャル秩序の外場制御に力をいれる。これまでにフェロアキシャル物質NiTiO3を対象とし,応力印加による制御を試みているが,相転移温度が非常に高温であることなどを要因として,未だ制御は実現していない。そこで現在は,より転移温度が室温に近い物質におけるフェロアキシャル秩序の観測に着手しており,そのような物質を対象として,フェロアキシャル秩序の制御を行っていく予定である。
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