2022 Fiscal Year Annual Research Report
難治性急性骨髄性白血病におけるEVI1遺伝子過剰発現メカニズムの解明
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22J11518
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林田 裕樹 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | EVI1 / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
EVI1は正常造血に必須で未分化な造血細胞分画に特異的に発現することが知られている。EVI1遺伝子が過剰発現した急性骨髄性白血病は極めて予後不良であり、特異的な治療法の開発が望まれている。本研究は、EVI1遺伝子の発現制御機構の解明を目指している。 まず、EVI1高発現のヒト白血病細胞株において、EVI1遺伝子の終止コドンの位置にP2A-EGFP配列をノックインし、EVI1の発現量がGFPの蛍光強度と相関する細胞株を作成した。この細胞株に全ゲノムCRISPR/Cas9ノックアウトライブラリを導入し、フローサイトメーターを用いてGFPの蛍光が弱い細胞集団(GFPLow)と強い細胞集団(GHPHigh)に分別し、次世代シーケンサーで解析した。もしEVI1発現を増加させる因子がノックアウトされればGFPの蛍光が低下すると予想されるので、GFPLowで多く検出されたsgRNAの標的遺伝子を、統計学的にランキングして抽出した。上位の遺伝子について個別にノックアウト実験を行ったところ、複数のEVI1高発現細胞株において共通してEVI1の発現を増加させる因子を複数同定した。このうち、最も強くEVI1の発現に影響を与えた因子は、急性骨髄性白血病において細胞増殖やアポトーシス抑制作用を有する転写因子として報告されていたが、EVI1との関係については論じられたことがない因子であった。ChIP-seqでは、同因子はEVI1のプロモーター領域に結合することが示唆されている。今後、この因子がEVI1の発現にどのように関わっているのか、さらに詳細な検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室は、Evi1遺伝子座にEvi1のcDNA配列とGFPをノックインしたEvi1-GFPマウスを所有しており、このマウスの細胞はEvi1の発現量をGFPの蛍光で確認することができる。本研究では、当初はこのEvi1-GFPマウスの細胞由来の白血病モデルマウスを作成しCRISPR/Cas9スクリーニングを行うことを計画していた。しかし、十分な細胞数を確保できないことや、GFP陽性のEvi1高発現細胞をin vitroで維持することが難しいことなどから計画を断念し、代わりにヒト細胞株を用いた上記のスクリーニング実験を進めることとした。計画の変更はあったものの、適切なスクリーニングを実施し遺伝子の絞り込みも行うことができたため、研究は概ね順調に進展している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した、EVI1遺伝子の発現に関わっていると考えられる因子について、ノックアウトマウスの作成を行い、正常造血および急性骨髄性白血病での同因子の役割について、検討を進めていく予定である。また、同因子がEvi1の発現に具体的にどのように関わっているか、ChIP-seqをはじめとする複数のゲノムワイドの解析を組み合わせて、エピゲノムの観点からも詳細な検討を進めていく。これらの解析を通じて発現制御メカニズムを明らかにした上で、EVI1過剰発現急性骨髄性白血病における新たな治療戦略の可能性を模索していく。
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