2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a large effective area liquid argon telescope for direct validation of heavy element synthesis in the universe
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22J11653
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 聡 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 液体アルゴン検出器 / MPPC / ASIC |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、ガンマ線源として運用可能な液体アルゴン検出器に搭載するシンチレーション光と電離電子それぞれを捉えるセンサーの開発および検出器の筐体・設置用具を開発した。シンチレーション光を大検出効率で捉えるためMPPC単素子の性能評価を行ったほか、4x4に単素子を並べたMPPCアレイを低ノイズトランスインピーダンスアンプに搭載してダーク信号やゲインなどの重要なパラメータを調べた。アンプの時間応答は非常に高速で、シミュレーションとの比較から気球上空でのガンマ線イベントと2次宇宙線の中性子バックグラウンドを判別することが可能であることがわかった。 電離電子信号の読み出しのため、256チャンネルの独立したアノードピクセルプレートの設計・製作を行なったことに加え、信号の多チャンネル読み出しが可能で低ノイズのプリアンプ・AD変換機能を持つASICを搭載したFront End Card(FEC)を設計した。FECのASICに制御信号を与えたり逆に信号を受け取ってデータ取得用コンピュータに転送するFPGAボードを購入したため、MPPC用アンプの出力をトリガ信号として受け取って処理するためのコードを開発し始めた。 さらに液体アルゴン検出器用を入れて高純度の液体アルゴンを充填するためのクライオスタットの設計も完了させている2023年度には実際に制作する予定である。 また米国コロンビア大学に滞在し、ニュートリノ検出器の専門家と議論をしながら液体アルゴン検出器用のガンマ線シミュレータを開発した。ガンマ線とアルゴンが反応することで生じる電離電子のドリフト・拡散を考慮することでより現実に近い環境で信号を模擬することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MeVガンマ線の分光撮像のコンセプト実証機の重要パーツであるMPPC単素子およびアレイ型について、ガンマ線のコンプトン散乱や光電吸収イベントをトリガ信号として捉えられるということを解析およびシミュレーションの観点から実証することができた。液体アルゴン温度でも運用可能なトランスインピーダンスアンプアンプを開発することができたため、固定用の治具を用意することですぐにTPCに取り付けて使用することができる状態になっている。電離電子信号の読み出し回路については、ガンマ線信号が外部ノイズの影響に弱いことが詳細なスタディからわかったため、電極をワイヤではなく256チャンネルの独立したピクセルで読み出すことにした。すでにピクセル電極を搭載した基板は製造が完了している。電離電子信号の増幅のために用いる、プリアンプ・AD変換器の機能をもつASICを搭載した基板も設計・製造が完了している。ASICからの信号を読み出すFPGAボードのロジック開発および性能評価は2023年度に引き続き実施する予定である。クライオスタットの設計はすでに終えており、研究拠点と自治体の安全審査もほとんど終了しているため実際に製造・組み立て作業を2023年度に行う。MeVガンマ線天体観測用のフルシミュレータの構築に向けて、Geant4を用いたガンマ線シミュレーションコードを開発した。偏光ガンマ線を解析して偏光度・偏光角を推定するフレームワークも取り入れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでMPPCの性能評価は暗電流もしくは可視光レーザーを使って行なっていた。小型の真空チェンバーの準備が整ったため、実際にチャンバーを真空引きしてガスアルゴンを充填し、シンチレーション光の検出実験を行う。電離電子読み出し用のASIC搭載基板の性能評価のため、アナログ入力側に何も接続しないでペデスタルを解析し、データ取得用コードの開発を進める。さらにアノードピクセルボードと繋いでピクセル電極の浮遊容量も含めたノイズ性能を評価する。 これまで光検出器と電離電子検出器の開発は独立に進めてきたが、シンチレーション光をトリガとして電離電子信号をコンピュータに取り込むシステムを構築する。シンチレーション光と電離電子にそれぞれ独立な絶対時刻を付与し、データ解析用コンピュータでガンマ線イベントとして取り込むためのソフトウェア系も開発する。すでに開発した、ニューラルネットワークを用いたガンマ線検出器用のイベント再構成手法をコンセプト実証機用に再学習させ、実際の電場などによるレスポンスを含めた詳細な解析手法も準備する予定である。 液体アルゴン用のクライオスタットが完成したのちには、液体アルゴン検出器を組み立てて内部に導入し、ガンマ線イメージングの試験を行う。ガンマ線源としては複数のコバルト60とイットリウム88サンプルをTPC外部に設置し、イベント再構成手法を使って最初の散乱角とエネルギーをイベントごとに推定する。さらに最大エントロピー法を使って実際の画像を再構成する。本研究で得られた結果をまとめ、査読付き論文として雑誌に投稿する。
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[Presentation] GRAMS 実験 11: 液体アルゴンコンプトンカメラ実 証機の開発状況2023
Author(s)
高嶋聡, 新井翔大, 市橋正裕, 小高裕和, 馬場彩, 青山一天, 櫻井真由, 田中雅士, 中曽根太地, 寄田浩平, 米田浩基, 渡辺伸, GRAMS コラボレーション
Organizer
日本物理学会春季年会 2023年春季年会
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