2022 Fiscal Year Annual Research Report
構造因子の精密制御による配位子保護金クラスター間電子移動反応の反応機構解明
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22J11665
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陶山 めぐみ 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 配位子保護金属クラスター / クラスター間電子移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において、Pt@Au12超原子コアを持ち、6電子で準閉殻電子配置をとる[PtAu24(SR)18]0と、その2電子還元体で8電子閉殻な[PtAu24(SR)18]2-の間で、有機配位子層の形成する絶縁層があるにも関わらず、溶液中で自発的な電子移動が進行し、新奇の開殻7電子クラスター[PtAu24(SR)18]-が化学量論的に生成される(式1)ことを見出した。 [PtAu24(SR)18]0 (6e) + [PtAu24(SR)18]2- (8e) → 2[PtAu24(SR)18]- (7e) (1) そこで本年度は、直鎖アルカンチオラート保護のクラスターを用い、上記の電子移動の反応速度の鎖長依存性について調査を行った。実験は、炭素鎖nが2から16までのアルカンチオラート(SCnH2n+1)で保護されたPtAu24クラスターの8電子体と6電子体をそれぞれ合成した上で、8電子体と6電子体の組み合わせを変えながら溶液中で等量混合した。反応は紫外可視吸収分光法を用いてモニターし、反応速度を算出した。その結果、アルキル鎖が長い領域の方が短い領域と比べ電子移動が速い、という直感に反する結果を得た。エレクトロスプレーイオン化質量分析によるクラスター二量体の安定性評価や、活性化エネルギーの算出から、この結果は、中間体として提案されるクラスター二量体内で超原子軌道の重なりによって電子移動が進行する際に、長いアルキル鎖間のファンデルワールス相互作用によって以下の2点が起こったためと結論した。 1. 中間体であるクラスター二量体の寿命の伸長、2. 反応する2つのクラスター間の距離の短縮による電子移動の反応確率の向上 上記の研究結果は、クラスターサイズの小さな粒子において溶液中の配位子層のダイナミクスが、クラスター間の反応に重要な役割を果たすことを露わにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自らが見出したクラスター間電子移動反応において、配位子に長鎖アルカンチオラートを用いた場合、電子移動反応が向上することを見出した。これは、平坦な金表面や直径2nm以上のナノ粒子では見られなかった新たな挙動であり、クラスターサイズの小さな粒子においては、配位子層の挙動の理解がその粒子間の反応性を理解するために重要であることを示したものである。これらの知見は、今後、配位子保護金属クラスターを電子輸送材料や溶液中での触媒反応などへ応用する上で、配位子間の相互作用、特に長鎖アルキル鎖間のファンデルワールス相互作用が電子輸送性や触媒作用を高める新しい戦略を提供することが期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究結果を端緒とし、解明した反応メカニズムの実証も兼ねて、外部応答で電子移動能を制御したクラスター複合系への展開を模索する。例えば、電子移動し得る2種のクラスターを、距離を保つことのできるスペーサー(有機鎖など)で連結し、 外部刺激(光異性化など)によってスペーサーの構造を変化させて距離を近づけ、電子移動を起こすスイッチング系を設計する。また、配位子間の相互作用や電子移動反応を利用し、クラスターの自己集積化などにも取り組みたい。
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Research Products
(4 results)