2023 Fiscal Year Annual Research Report
法的概念としてのライシテ─その変容と連続についての歴史的分析─
Project/Area Number |
22KJ0825
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小坂 和広 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ライシテ / 政教分離 / フランス法 / 憲法 / 信教の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、法的概念としてのライシテについて、その変容過程と法学上の意義とに着眼しながら、当該概念の実相の解明を試みたものである。具体的には、コンコルダが制定された19世紀初頭から現代に至る期間を対象に、フランスの政教関係と信教の自由に関連する判例の系譜と学説の展開を明らかにしている。判例に関しては、19世紀の公認宗教体制下のそれとの比較を行いつつ、各々分野における判例法理が20世紀以降においてどのように発展したかを解明した。また、学説に関しては、19世紀に宗教信仰が当然とされ、そうした前提のもとで信教の自由が語られていたことを明らかにした。その上で、ライシテの確立により、マイノリティ宗派や無神論への配慮が見られるようになり、リベラルな思考枠組みが定着したことを解明した。 これまでライシテに関する判例法理やその発展過程は、個別の判例分析を除けば、ほとんど未解明であったといっても過言ではない。そのような状況において、政教関係や信教の自由に関するフランスの判例の展開につき、その輪郭を通時的に描いたという点で、本研究には一定の意義が認められるものと考えられる。また、ライシテの法的淵源である1905年法についても、その法学的分析は、わが国においてはほとんどなされていなかったところ、その議論の実態について、ある程度の内容を描くことができた点でも一定の意義があると考えられる。現代におけるライシテについても、最新の判例や議論を分析し、かつてのものと比較することを通じて、法的概念のライシテの現在地や課題を明らかにした。その意味で、本研究には、先行研究のアップデートという意義も認められる。
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