2022 Fiscal Year Annual Research Report
5-アミノレブリン酸の欠如がもたらす腎臓病の発症メカニズムの解明とその治療
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22J11900
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西 玲央 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 5-ALA / 酸化ストレス / 8-OHdG / 糸球体濾過量 / HO-1 / ミトコンドリア / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、①培養細胞を用いた基礎研究、②マウスを用いた応用研究、③猫の臨床サンプルを用いた臨床研究の3つに大別し、研究を遂行した。 ①では猫腎上皮細胞に対して過酸化水素を添加することで酸化ストレス条件を作出し、5-ALAが酸化ストレスを抑制するか検討した。その結果、5-ALAを培地中に添加していない細胞では細胞生存率が低下し、酸化ストレスマーカーの1つである8-OHdG濃度の上昇やミトコンドリアの機能障害が認められた。しかし、5-ALAを添加した細胞ではそれらが改善し、5-ALAに加えて5-ALAの代謝阻害剤を添加した細胞では改善が認められなかった。 ②では5-ALAの合成酵素であるALAS1遺伝子ヘテロ欠損マウスにおける腎障害を評価した。また、同マウスに5-ALAを反復投与することで、腎臓における5-ALAの重要性を評価した。ALAS1ヘテロ欠損マウスでは血清中8-OHdGの上昇、糸球体濾過量の低下、近位尿細管上皮細胞におけるミトコンドリア障害、抗酸化遺伝子の一種であるHO-1遺伝子発現およびHO-1蛋白発現の低下が認められたが、5-ALAの反復投与によってこれらの改善が認められた。 ③では当大学動物医療センターに来院した慢性腎臓病(CKD)罹患猫の血液サンプルを収集し、CKDのステージごとの8-OHdG濃度を評価した。その結果、CKDの初期ステージの猫における血漿では健常猫と比較して8-OHdG濃度に有意な変化は認められなかったが、ステージの進んだCKD症例では有意に8-OHdG濃度が上昇していた。 以上のことから、5-ALAの投与は細胞レベル、マウスレベルで酸化ストレスの抑制やミトコンドリアの保護に効果を示した。また、猫のCKDでは酸化ストレスが認められたことから、CKDに罹患した猫における5-ALAの投与は酸化ストレスを抑制し、病態の進行を抑える可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、in vitroの実験およびマウス実験と並行して、臨床サンプルの酸化ストレスの評価のために当大学動物医療センターに来院した臨床症例から血液、尿サンプルを収集した。また、2022年度以前に条件検討を重ねたことによって、今年度の研究は順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性腎臓病や他疾患に罹患した猫に5-ALAを投与することで、5-ALAの投与前後の8-OHdG濃度を比較し、臨床症例における5-ALAの有用性を評価する。これに加えて、8-OHdG以外の酸化ストレスマーカーについても評価を行い、各疾患における酸化ストレスマーカーの変動の差異を検討する。また、獣医画像診断専門医とともに臨床研究を実施し、これまで申請者の研究に組み込まれていなかった画像診断の研究方法や知識を会得することで、より臨床に即した形で研究の幅を広げる。
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