2022 Fiscal Year Annual Research Report
原子物理と検出器物理の融合による高エネルギー光子の量子反応過程の解明
Project/Area Number |
22J12155
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
都築 豊 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | コンプトンカメラ / 偏光 / 多価イオン / 電子ビームイオントラップ / X線 / ガンマ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果は主に以下の三点である。 第一に、コンプトンカメラ (CC) と電子ビームイオントラップ (EBIT) を使用して、多価クリプトン (Kr) イオンからの放射性再結合X線の偏光測定実験を遂行した。 実験の際、CCを軸方向に回転させることにより、方位角に対する検出器応答の偏位を評価した。 これは我々が目的とする二電子性再結合X線の偏光測定における系統誤差評価に必要であった。 さらに、多価ビスマス (Bi) イオンからの二電子性再結合X線の測定データを解析し、偏光度の導出に道筋をつけた。 第二に、CCを用いた放射線源の可視化および放射点の位置決定のために、ベイズ統計学に基づく新たな手法を開発した。 これは本来の研究計画には陽に含まれていなかったが、上述の偏光測定実験のためのCCの精密な位置較正手法について研究を進めた結果、新手法の発見に至ったものである。 新手法の特長として、放射点の位置を従来手法よりも精度よく、かつ誤差つきで導出可能であることが挙げられる。 第三に、CCを原子物理学以外の分野に展開し、原子核からのガンマ線偏光測定実験を遂行した。 これも本来の研究計画には含まれていなかったものであるが、CCの偏光測定性能が事前の予想を超える高さであることが判明したため、原子核分野の研究者との共同研究に至ったものである。 実験には線形加速器を利用し、生成した陽子ビームを鉄標的に照射することでガンマ線を発生させた。 以上の成果は、研究代表者の博士論文にて一部を除き発表された。 また、2023年時点で未発表の部分についても2028年までに発表予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
偏光測定実験については、進捗は順調である。 それどころか、当初の計画を超えて他分野への展開が実現している。 偏光計の検出器応答の評価については、進捗が遅れている。 その大きな理由は、研究を進めるなかでコンプトンカメラの新たな展開の可能性が見出されたために、研究資源の配分を変更し、より可能性を拡大する戦略をとったためである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、主に3つの柱がある。 第一に、「研究実績の概要」に記した成果をまとめ、論文の形で発表することである。 第二に、コンプトンカメラを用いた偏光研究をさらに発展させ、特に原子核実験物理学の分野において革新的な偏光測定手法を確立することである。 第三に、本来の研究計画に盛り込まれていた検出器内部の物理的素過程モデルに基づいた応答解析を進めることである。
|
Research Products
(4 results)