2022 Fiscal Year Annual Research Report
主権者教育における理論研究-ハンナ・アレントの「自発性」に着目して-
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22J12264
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋口 大夢 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ハンナ・アレント / 自発性 / 主権者教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第二次大戦後のアメリカで活躍した政治理論家ハンナ・アレント(1906-1975)の「自発性」の観点から彼女の教育と政治をめぐる議論に着目することを通じて、若者の政治参加における多面性を踏まえた主権者教育の理論的基盤を構想することである。本研究は、投票行動の促進に限らないより広い意味での若者の政治参加を射程に入れており、投票行動を念頭に置いていたこれまでの主権者教育研究の更なる発展を促すことができる。本年度は、新型コロナウィルスの感染状況等を鑑み、アレントの文献読解とそれに基づいた主権者教育理論の構想について現職の教員らと意見交換することを通じて、アレントの教育思想の可能性と限界について検討を進めてきた。具体的に遂行した研究課題は、以下の二点である。 1:カントからアレントへ流れる「自発性」の系譜とルソーから「進歩主義教育」に流れる「自発性」の系譜を比較する。 2:アレントの「自発性」に基いた初等・中等教育に適用可能な主権者教育の理論的基盤の構想を行う。 一点目については、アレントのルソー批判が展開されている『革命について』を中心にして、アレントとアレントが論じるルソーの異同について検討を行った。二点目については、定期的に現職教員らと交流する中で、アレントの論じる「自発性」を保守する教育の可能性と限界について検討を行った。これらの研究成果については、現在投稿論文として発表する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画にしたがって、「研究実績の概要」に示した二つの課題に取り組むことができた。また、そうした研究成果の一部は、日本教育学会と教育哲学会で発表した。なお、当初はアメリカ議会図書館で資料調査を行う予定であったが、コロナウィルス感染症流行によって、今年度の実施を延期することとした。その代わりに、国内の実践的動向についての検討(「研究実績の概要」で示した項目の2つ目)を優先させたことによって研究は進展させることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、現在までの成果を下敷きにしつつ、アレントの「進歩主義教育批判」をリトルロック高校事件とのかかわりから検討し、それらに基づいた主権者教育の理論的基盤の構想に取り組みたい。
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