2022 Fiscal Year Annual Research Report
大規模重合によるスロー地震スペクトルの評価:広帯域スロー地震現象の解明に向けて
Project/Area Number |
22J12322
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 滉己 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | スロー地震 / 南海沈み込み帯 / メキシコ沈み込み帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでスロー地震の研究は日本やアメリカ西海岸といった密な観測網が整備された地域で特に精力的に行われており、その他の地域では必ずしも網羅的もしくは長期的な解析は行われていない。本研究では、観測点分布がまばらな観測網しかない地域にも適用可能な、単一観測点の地震計データからスロー地震を検出する手法の開発を行った。スロー地震を検出する際、従来は用いる周波数帯域を高周波数帯域(1-10 Hz)か低周波数帯域(0.01-0.1 Hz)に限定し、それぞれの周波数帯域で確認されるシグナルを1つのイベントとして検出していた。本研究ではこれらの2つの周波数帯域の情報を使い、地震波エネルギーレートと地震モーメントレートという現象の規模を表す物理量に変換した上で、2つの帯域で相関をとることで広帯域なシグナルとしてスロー地震を検出する。令和4年度は、この手法を2つの地域のデータに適用した。まず、高密度な観測網が整備されているおかげでスロー地震の活動が長期的かつ網羅的に把握されている日本のデータに適用し、性能の評価を行った。より高密度な観測網を利用可能な高周波数のみを使う既存の手法に比べると本手法の検出能力は劣るが、検出結果は整合的であった。本手法の重要な特徴である、まばらな観測網にも適用可能であるという特徴を生かすため、次に、スロー地震が検出されているものの解析期間と解析領域が限られているメキシコ沈み込み帯のデータに適用した。この地域でも先行研究とおおむね整合的な検出結果が得られ、さらに、これまで知られていないかったスロー地震活動の検出に成功した。これらの研究成果について適宜、国内学会と国際研究集会、国際学会で発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、従来より長周期の周波数帯域の地震計データを用いてスロー地震シグナルの存在やその活動を解析する予定であったが、現象に対する見方を改め、従来複数のイベントとして検出されていたようなシグナルを一つの活動として解析する方針で取り組むことにした。新しい現象のとらえ方で検出を行うことで本来の目的を達成する予定であるが、手法開発からスタートすることになり、その検討や性能評価に時間を割くことになったため、活動の詳細な検証までは至らなかった。一方、これまで知られていない活動の検出に成功しており、副次的に当初計画以上の研究成果が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、これまで得られた成果を論文にまとめ査読付き国際誌に投稿する。その上で、10000秒程度の周期のスロー地震現象の評価という当初の目的を達成するため、令和4年度の成果である検出結果をより詳細に解析する。さらに、並行して、新しく開発した手法の特徴を生かし、メキシコ沈み込み帯以外の、スロー地震が限られた領域や期間でしか検出されていない、もしくは全く検出されていない地域のデータを解析することで、これまで知られていないスロー地震活動の検出を目指す。
|