2023 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫におけるDNAセンサーIFI16による自己DNA認識の分子基盤の解明
Project/Area Number |
22KJ0858
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 誠也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | クロマチン / ヌクレオソーム / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞核内の染色体は、ヌクレオソームを基本単位として構築されている。ヌクレオソームは、ヒストンH2A、H2B、H3、およびH4をそれぞれ二分子ずつ含むヒストン八量体に、約150塩基対のDNAが巻き付いた構造体である。ヒストンには一部のアミノ酸配列が異なる様々な亜種(ヒストンバリアント)が報告されている。ヒストンバリアントは染色体上の特定の領域に局在し、特殊なヌクレオソームを形成することで、動原体形成や遺伝子発現など生命維持の根幹を成す様々な反応を制御すると考えられている。そのため、ヒストンバリアントによって形成されるヌクレオソームの性状を明らかにすることが、染色体の機能発現機構の理解に重要である。
本年度は、近年ヒトにおいて新規に同定されたヒストンH3のバリアントであるH3.8に着目し解析を行った。H3.8はアミノ酸配列の相同性から、染色体上の転写が活発な領域に局在するヒストンバリアントH3.3より派生したと考えられている。しかし、H3.8が形成するヌクレオソームの性状および機能については明らかになっていなかった。そこで、H3.8ヌクレオソームの性状を解明するために、H3.8ヌクレオソームを調製し、クライオ電子顕微鏡解析と生化学的解析を行った。その結果、H3.8ヌクレオソームはDNA末端の運動性が高く、不安定な構造を持つことが明らかとなった。また、RNAポリメラーゼIIによる転写実験を行ったところ、H3.8ヌクレオソーム上で転写伸長反応が僅かながら効率的に起こることが明らかとなった。これらの成果は、ヒストンバリアントによる染色体制御機構の理解に重要な知見を提供するものである。
上記の内容を含め、研究期間全体を通じて、ヌクレオソームの構造生物学的および生化学的解析を推進し、原著論文2報を報告するとともに2件の学会ポスター発表を行った。
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