2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J12387
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 学 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 月 / 熱史 / 衝突 / 重力異常 / スペクトル / マグマ |
Outline of Annual Research Achievements |
月の熱進化史を解明する上で、月が初期に経験する膨張の時代や規模の制約は必要不可欠である。この初期膨張の際に貫入岩体が形成されると考えられ、その存在を示唆する線状重力異常が月で見つかっている。本研究ではこの線状重力異常を手掛かりに、貫入岩体の構造や年代から月の膨張史について示唆を与えるべく、直径160kmの巨大クレーターであるRowlandとRocheの両クレーターとその線状重力異常の関係性を、重力異常と周囲のスペクトルデータから探った。 本年度はまず、衝突数値計算コードiSALEでの計算から、線状重力異常直上にクレーターが形成することで生じる影響を見積り、実際のデータとの比較を行った。その結果、Rowlandクレーターの重力異常は再現できない一方、Rocheクレーターの場合は再現が可能であり、両クレーターにおいて地下の貫入岩体の掘削の有無に差があることが示された。 更に周囲のスペクトルデータの解析を行い、両クレーター周囲に貫入岩体由来と考えられる玄武岩露頭の存在の有無について調査した。かぐやのMultiband ImagerとChandrayaan-1のM3のスペクトルデータを用い、輝石のタイプとその鉄・チタン量を推定した。その結果、その有無は上記の数値計算の結果と整合的であり、貫入岩体の掘削の有無が両クレーターについて更に証拠づけられた。 上記の結果より、見つかった玄武岩の露頭の組成から、この時代に生成されたマグマの組成についての推定を行った。この結果はこの当時の月の熱状態を考察する上で新たな化学組成的制約となりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、伸張応力下における地形変化計算を用いた、月線状重力異常形成時の応力場推定に着手する予定であった。この計算にはあまり時間を裂けなかったが、その代わりにスペクトル解析を充実させ、貫入岩体に関する考察を深めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
周囲の応力状態と岩石貫入に伴う地形変形の計算を行い、実際の月線状重力異常直上で観測されている谷状地形の再現を行う。膨張に伴う引張応力と岩体形成スピードをパラメータとして変形計算を行い、最も実データを再現できるパラメータセットを推定する。これにより、これまで道であった月の膨張速度への制約を行う。
|