2023 Fiscal Year Annual Research Report
中生代海棲爬虫類の尾部軟組織復元と機能形態学的解析に基づく水棲適応史の解明
Project/Area Number |
22KJ0863
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉澤 和子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 古生物 / 海棲爬虫類 / 魚竜型類 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶滅海棲爬虫類の中で、本研究では尾と体で泳ぐ生物(Body and caudal fin swimmer, BCF swimmer)である魚竜型類に注目し、その遊泳様式と能力の解明を目的に、尾部および後肢の軟組織復元と巡航スピードの推定を行った。研究に必要なデータを収集するため、ヨーロッパの博物館にて保存状態の良好な化石標本と計測を実施した。 軟組織復元:前年度は、骨格形態の定性的な情報をもとに復元を試みた。今年度は、各分類群の骨格形態の差異を定量化するため、前年度から蓄積してきた化石標本の計測データと文献値を使用し、骨盤と後肢の骨格形態の解析を実施した。この結果、より巡航に適応しているとされる派生的な分類群には、骨盤と後肢の骨格形態の特殊化が見られることが明らかとなった。 巡航スピードの推定:現生のBCF swimmerの運動学データの解析により、様々な遊泳様式のBCF swimmerの外形の情報から巡航スピードを推定できる数学的モデルを昨年度中に考案した。魚竜形類には背腹方向に非対称な尾を持つものが多いが、現生生物の運動学データを解析したところ、非対称な尾を持つ生物は対称な尾を持つものに比べて巡航スピードが遅い傾向があることが分かった。非対称な尾を持つ生物の巡航スピードを推定するためのモデル式を作成するため、サメのデータを解析しモデル式中の定数を再計算した。このモデルを用いて、中生代の3つの時代(前期三畳紀、中期三畳紀、前期ジュラ紀)の異なる形態の魚竜形類について巡航スピードを推定し、より派生的な前期ジュラ紀の魚竜形類はより高速で巡航したと推定された。また、代謝率から巡航スピードを推定する先行研究のモデルによる推定結果と、本研究の結果を比較することで各分類群の代謝率を推定した。前期ジュラ紀の魚竜形類は、それ以前の魚竜形類に比べ代謝率が上昇していたことが示唆された。
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