2023 Fiscal Year Annual Research Report
脱ロシア化と再ウクライナ化:現代ウクライナに於ける言語イデオロギーの二面性
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22KJ0866
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池澤 匠 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ウクライナ / ウクライナ語 / ロシア語 / スルジク / 言語接触 / 社会言語学的表象 / 言語イデオロギー / ロシアによるウクライナ侵攻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では現代ウクライナにおける言語イデオロギーに関して、同国で唯一の国家語であるウクライナ語、歴史的背景から広く用いられるロシア語、ならびに両語の混合語であるスルジクが如何なる社会的評価を被るか、インターネットの新聞記事を基に分析をしてきた。ロシアによるウクライナ侵攻が起き、言語状況の大きな変化が見込まれたことから、令和5年度は研究資料を拡大するといった、研究計画の一部変更を行っている。 令和5年度は研究成果を口頭で2件、論文で2件発表している。令和4年度から継続的なものとしては『東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室年報』第37号に論文「ウクライナにおける言語イメージの変化:ロシア連邦による軍事侵攻の影響」を公表し、侵攻以後に公開されたウクライナの言語問題に関するインターネットの新聞記事を基に、対象の「3つ」の言語の社会的評価が如何なる変化を被ったか考察し、特に混合語であるスルジクが威信的なロシア語よりも話すのに望ましい言葉となっている点を指摘している。 新たな観点による成果としては『京都大学大学院文学研究科スラブ語学スラブ文学専修年報』第3号に論文「ウクライナの言語政策関連文書における『国家語』の定義と運用について」を公表し、侵攻前までの言語政策に関する法律文書を資料として、ウクライナ語に唯一付与される言語地位である「国家語」がソ連末期から如何に変遷してきたか、考察した。その他には侵攻以後に利用が活発となっているSNSの投稿を新たな資料として、戦時下における言語に対する認識の研究も行い、一部成果を学会発表で扱った。報告内容は改訂の上、令和6年度に投稿論文として公表する予定である。 アウトリーチ活動の面では、シンポジウム「ウクライナ文化の挑戦―激動の時代を超えて」にて講演を行い、現今までの研究成果を基にウクライナ侵攻の言語的背景を解説する報告を行った。
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