2022 Fiscal Year Annual Research Report
材料-熱流動ハイブリッド法による福島第一原子力発電所燃料デブリ分布推定
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22J12786
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 諒 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 燃料デブリ / シビアアクシデント / 粒子法 / コリウム / 福島第一原子力発電所 / 溶融凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原子力発電所事故により発生した燃料デブリの取り出しを安全かつ最適に実行するためには、燃料デブリの位置、特性等を含む燃料デブリ分布を推定することが極めて重要である。令和4年度は、燃料デブリ分布推定を行う上で重要な、熱流動現象に関する系統実験及び数値解析モデル開発を行なった。 まず、福島第一原子力発電所事故時、溶融した高温高粘性物質は水中へ落下し、拡散・凝固したと考えられている。よって、水位やサブクール度等の熱的パラメータを変更した溶融金属jet水中落下に関する系統実験を実施し、実験式の構築を行なった。提案した実験式より、溶融物の水中での凝固現象が溶融金属の慣性力と凝固特性のバランスによって変化することが定量的に明らかとなった。また、固体ー液体を統一的に取り扱うことができる粒子法、Moving Particle Hydrodynamics(MPH)と乱流解析手法であるLarge Eddy Simulation (LES)を組み合わせたMPH-LES法を開発し、水中での溶融物の凝固特性を解析した。その結果、本手法の妥当性を評価するとともに、水位に依存した凝固特性を解明した。 次に、上記の高温高粘性物質の実験において世界的な実績を有するフランス 原子力・代替エネルギー庁(CEA)へ渡航し、共同研究を実施するとともに、実機模擬物質を用いたVULCANO VE-U9実験の解析をMPH法を用いて解析した。実験では、床面溶融を伴う犠牲材コンクリートと床面溶融を伴わない不活性セラミックスを用いて実験を実施した。床面の条件に応じた、境界条件を開発し、床面が高温高粘性物質の拡散に与える影響を評価した。解析結果は実験を良好に再現し、特に床面溶融の条件では、溶融物が潤滑剤の役割を果たし、拡散を促進させることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画書通り、水中での溶融物の凝固特性を評価する手法の確立及び実機物質を用いたフランスとの共同研究VULCANO VE-U9を通じた、高粘性物質の溶融凝固モデルの妥当性評価を実行することができた。双方ともに、福島第一原子力発電所で発生した燃料デブリ分布を推定するために重要である。尚、本研究の成果は査読付き学術論文誌に2報受理されている。[1][2] [1] Ryo Yokoyama, Masahiro Kondo, Shunichi Suzuki, Koji Okamoto, Simulating melt spreading into shallow water using moving particle hydrodynamics with turbulence model, Computational Particle mechanics, 2022. [2]Ryo Yokoyama, Masahiro Kondo, Shunichi Suzuki, Shuichiro Miwa, Marco Pellegrini, Micael Johnson, Arthur Denoix, Viviane Bouyer, Christophe Journeau, Koji Okamoto, A Lagrangian approach to ex-vessel corium spreading over ceramics and concrete substrates using a moving particle hydrodynamics, Nuclear Engineering and Design, 399, 112029
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、令和4年度に開発した数値計算手法を用い、実機体系での大規模溶融物拡散に関する数値計算を実施し、直接燃料デブリ分布を推定する予定である。初めに、大規模計算を実現するための溶融凝固解析モデルの高速化を実施する予定である。高速化により、大規模計算実行への見通しを経たのち、CAD等を用いた実スケール福島第一原子力発電所ジオメトリの作成、文献調査等による詳細な境界条件設定を実施する予定である。 全ての準備が終了した後、まず3号機を対象として数値計算を実施する予定である。具体的には、3号機では燃料デブリが山型に堆積していることから、除熱効率、溶融物の初期粘性に関する感度解析を実施し、最も山型に近くなる計算条件からデブリの組成を推定する予定である。次に1号機に関する大規模計算を実施し、炉内状況と比較する予定である。最終的に、最も合理的な燃料デブリ分布に関して企業等に報告し、燃料デブリ取り出しに寄与する予定としている。
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