2022 Fiscal Year Annual Research Report
小質量低金属量恒星大気の性質の統一的理解に向けた理論研究
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22J13525
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鷲ノ上 遥香 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | コロナ加熱 / 恒星大気 / 磁気流体数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々な金属量環境下で形成される彩層での輻射損失および磁気流体力学的効果を適切に取り入れたモデルを構築し、それを用いたコロナ加熱数値計算を行うことで、恒星コロナの性質を統一的に理解することである。 恒星の金属量は大気中の輻射冷却効率に大きく影響するため、コロナの性質を決める重要なパラメータである。しかしながら、太陽金属量以外の恒星大気理論モデルは未だ確立されておらず、恒星コロナからの高エネルギー放射が周囲の環境へ与える影響について詳細に理解されていないという現状があった。 小質量恒星大気加熱の理論計算における困難な点の1つは、コロナの下層に位置する彩層のモデリングである。これは、彩層大気の部分電離効果や非熱力学平衡効果といった複雑な物理素過程を考慮する必要があるためである。当該年度ではまず、コロナ加熱における彩層の役割を明確にするために、様々な彩層構造を持つ恒星大気加熱の磁気流体数値計算を行った。この結果、コロナ形成と彩層の物理状態は密接に関係しており、高温コロナの形成条件が彩層温度とコロナループの長さによって表されることを見出した。これらの成果は海外査読論文誌に掲載されたほか、国内外の学会にて7件発表を行った。 さらに、太陽彩層の輻射損失モデルを参考に、異なる金属量を持つ彩層の輻射損失モデル計算を行なった。 このモデルを用いたコロナ加熱計算を実施した結果、コロナの性質は恒星の金属量に大きく影響を受けることが実証された。また、定常コロナにおける物理量を結ぶスケーリング関係式を準解析的に導出し、それをもとに数値計算結果の妥当性を確かめた。これらの結果について学会での成果発表を2件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、(1)コロナ加熱における彩層の役割の解明、(2)彩層輻射冷却モデルの改良・コロナ加熱計算実施とコロナの金属量依存性の調査、(3)様々な金属量星に適用できるコロナ物理量のスケーリング関係式導出 に取り組んだ。(1)についての成果は海外査読論文誌に掲載されており、(2),(3)に関しては現在論文投稿中である。国際会議や国内学会での講演も複数行っており、研究遂行のみならず成果発信をを積極的に実施した。これらは当初計画していた研究内容の通りであり、本研究は順調に進展していると判断した。 一方、彩層中の磁気流体力学効果の金属量依存性については未検証である。今後の調査によって様々な金属量を持つ彩層モデリングを完成させ、光球・彩層・コロナまでの大気加熱計算を行うことで小質量恒星大気の統一的理解を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、彩層中の磁気流体力学的効果に対する金属量依存性を調査する必要がある。当該年度の成果と合わせて様々な金属量を持つ彩層の理論モデルを構築し、これを用いたコロナ加熱計算を実施することで、信頼性の高い小質量恒星大気の描像を得る。 また、当該年度までは磁気流体数値計算を用いた定常コロナ大気の調査を実施してきたが、今後は恒星フレアなどの突発的エネルギー解放現象のシミュレーションも行う予定である。このような非定常なエネルギー放射成分の解析を合わせて行うことで、小質量星における磁気活動を広く理解することを目指す。今後様々な星への応用や周囲の系への影響評価を可能にするため、上記の研究計画遂行を通して基盤となる恒星磁気活動モデルを構築する。
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Research Products
(8 results)