2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J15355
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 壮駿 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 軌道帯磁率 / トポロジカル絶縁体 / ノーダルライン半金属 / 軌道ーゼーマン項の量子化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は主に2つに分けられる。第一に、2次元トポロジカル絶縁体の典型的な模型であるKane-Mele 模型に対し、帯磁率の3種類の寄与(軌道帯磁率、Pauli 帯磁率、および軌道―ゼーマン交差項)を精密に評価した。この評価は、原子波動関数の具体形を用いて(無磁場の)Bloch 波動関数を構成することにより行った。この定式化は次に示す4つの特徴を持ち、得られる結果は現実に実験で得られる値により近いものになると考えている。(i) Bloch 波動関数の完全性条件を利用することで、無限個あるバンドの寄与を全て取り込むことができる。(ii) 原子波動関数を通して原子の情報が取り込まれるため、原子内部の磁場効果を評価することができる。(iii) ある波数点周りの展開などをする必要がなく、Brillouin ゾーン境界が明確に定まり各寄与を正確に評価できる。(iv) 任意の化学ポテンシャルにおいて各寄与を評価できる。この研究で得られた結果から、無限個のバンドや内核電子の寄与を取り入れても軌道―ゼーマン交差帯磁率の量子化は影響を受けないことなどが明らかになった。また、軌道―ゼーマン交差項の具体的な測定法を提案し、実験による量子化の検出についても議論した。 第二に、同じくトポロジカル物質の1つであるノーダルライン半金属の模型を構築し、軌道帯磁率の数値計算を行った。円環状のノーダルライン上でエネルギーが上下する異方性を導入したとき、ノーダルラインに垂直な方向の軌道帯磁率は常磁性を示すことが明らかになった。物質中における軌道常磁性は比較的珍しく、ノーダルライン半金属を判別する良い指標になる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体模型について、帯磁率の評価を完了した。また、計画を一部変更して、ノーダルライン模型の帯磁率評価を行い、興味深い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ノーダルライン模型の計算で得た結果を踏まえて、ノーダルライン物質において観測された帯磁率が本研究の結果により説明できるか検討する。また、次年度の計画である、電子相関がある場合の軌道帯磁率の振る舞いについて数値的な研究を行う。
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