2022 Fiscal Year Annual Research Report
二つのT細胞受容体を発現するT細胞が持つ免疫学的意義の解明
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22J20745
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 聖大 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | T細胞受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
“1つのリンパ球は1つの抗原受容体を発現する.” この法則はBurnetの唱えたクローン選択説の拠り所とされ, 免疫学の大原則として広く受け入れられている. しかしその一方で, 2つの異なるT細胞受容体 (TCR) を同時に発現するT細胞 ”デュアルTCR T細胞” が存在することも確認されてきた. 本研究では免疫学の大原則の反例となるこの細胞の識別法を開発し, それを利用してデュアルTCR T細胞と通常のシングルTCR T細胞の機能的差異を明らかにすることを目指している. 研究代表者はこれまでにTCRα定常領域遺伝子 (Trac) の下流に各アレルで異なるレポーター遺伝子が挿入されたマウス (デュアルTCR T細胞標識マウス) を作製し, フローサイトメトリー解析によってデュアルTCR T細胞と通常のシングルTCR T細胞を識別することに成功した. 脾臓に存在するT細胞のレポーター発現を解析したところ, CD4陽性T細胞/CD8陽性T細胞ともに全T細胞のおよそ20%がデュアルTCR T細胞であった. 本年度はデュアルTCR T細胞標識マウスのゲノム再編集によって, Trac細胞外領域に各アレルで異なるペプチドタグ配列を挿入したマウスを作製した. このマウスのT細胞を抗タグ抗体によって細胞表面染色した後にフローサイトメトリー解析を行ったところ, ”2つのTCRを共に細胞表面に発現しているデュアルTCR T細胞” と “一方のTCRを細胞表面に発現し, もう一方のTCRを細胞質内に留めているデュアルTCR T細胞” を識別することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は細胞表面TCRの検出法を確立と、それを用いたデュアルTCR T細胞亜集団の識別を目的として研究を行った. 本年度の研究実績はまさにこの目的を完遂したものであり, 本研究課題は順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
”2つのTCRを共に細胞表面に発現しているデュアルTCR T細胞” と “一方のTCRを細胞表面に発現し, もう一方のTCRを細胞質内に留めているデュアルTCR T細胞” が互いに遷移しうるのか, 細胞表面のTCRと細胞質内のTCRの間に質的な差があるのか解析を進めていく. 加えて, セルソーターを用いてシングルTCR T細胞と各デュアルTCR T細胞を単離してT細胞欠損マウスに移入し、腫瘍細胞や同種異型マウスの皮膚などに対する免疫応答能に差があるか調べる
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