2022 Fiscal Year Annual Research Report
身体像と性愛からみたXジェンダー当事者における性自認の構築過程
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22J21053
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐川 魅恵 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | Xジェンダー / ノンバイナリー / トランスジェンダー / セクシュアリティ / 性別違和 / 身体イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
インタビュー調査については、性別違和を経験する/したことのある個人やその周囲のひとたち(親やパートナー)へのインタビューを行い、そのデータをもとに学内の研究会と国内学会での発表および国内の査読付き雑誌への論文投稿を行った。まず、夏に相関社会科学研究会でトランスジェンダー・スタディーズをテーマとした研究会を企画し、インタビューデータをもとにした研究報告を行った。恋愛や性愛の場面をきっかけに生じた性別違和の経験が、ジェンダー、セクシュアリティ、身体にかんする認識をどのように変化させ、性の分析概念としての三者が経験的にどのように結びついているのかを4名のインタビューデータを対象とした分析から明らかにした。さらに、そこでの議論をもとにした論文を国際基督教大学のジェンダー研究センターの学術雑誌『Gender and Sexuality』に投稿し、本論文は2023年3月末に刊行された。秋には、国際ジェンダー学会にてノンバイナリーカップルへのインタビューデータをもとに、非二元的な性が生み出す、性的な関係の新しい可能性について報告した。そこでの議論をもとにした論文を現在執筆中である。 以上のような論文執筆や学会報告を行う傍ら、性科学にかんする歴史資料の収集や日本のフェミニズム研究においてトランスジェンダーがどのように意味づけられていたかにかんする学術的な資料収集を行った。また、本研究における歴史調査の分析視角の確定に向けて、性差の歴史にかんする医学史やジェンダー史の先行研究のレビューを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体として研究の進捗にはやや遅れがでている。その要因として、新型コロナウイルス感染症の影響により思うようにインタビューを実施することができなかったことや、筆者自身も新型コロナウイルス感染症に罹患するなどして体調を崩していた時期があったためである。その一方で、資料収集およびその整理の時間を十分に確保することができたため、歴史関連の研究を進めるための基盤を予定より早く整えることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は遅れている分のインタビューデータの収集を優先的に行いつつ、歴史資料の分析と理論研究を中心に進めていく。まずインタビューについては、性別違和を経験するひとおよびその身近にいるひとを対象に、30名のインタビューデータを収集する。また、理論研究においては、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』における身体の構築性をめぐって生じた議論に焦点を当て、フェミニズムにおける性別と身体の理論化がどのように行われてきたのかを考察する。歴史については、日本の主流派のフェミニズムにおいて非規範的な性がいかに周縁化されてきたのかについて、セックス/ジェンダーの区分の導入とその概念的定着の歴史に着目しながら、フェミニズムとトランスジェンダーの関係について歴史的・学説的に考察する。
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Research Products
(2 results)