2023 Fiscal Year Research-status Report
身体像と性愛からみたXジェンダー当事者における性自認の構築過程
Project/Area Number |
22KJ1037
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐川 魅恵 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | ノンバイナリー / エンボディメント / インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
4月~8月は10名に複数回のインタビューを実施し、スクリプトの作成およびデータの分析を行った。その分析結果をもとに、9月に行われた日本解放社会学会大会で、「異性愛主義的物質化を拒絶する――非二元的な性を生きる者の語りから」と題し、6名のノンバイナリーの性別違和の語りを取り上げ、(異)性愛主義との関係のもとで自己のジェンダー化された身体の感じられ方がどのように変化しているのかについて報告した。発表後はコメンテーターや参加者の方々から、データの分析方法および理論的な観点から有意義なコメントをいただき、この報告をもとにした論文を執筆中である。また10月には、国際基督教大学ジェンダー研究センター主催の学術イベント「強制的(異)性愛に抗う:Aセクシュアルの視点から」に報告者の一人として登壇し、30分の研究報告を行った。「〈まっすぐ〉な時間からオルタナティブな時間へ――〔ヘテロ〕セクシズムと時間規範性からみたノンバイナリー/アセクシュアル」と題した本報告では、3名の非二元的な性を生きるアセクシュアルの語りを取り上げ、「子ども」や「大人」、「更年期」といった、ライフステージとも称される時間規範性を構成しうる概念に着目した経験的考察を行った。本イベントではコメンテーターや参加者の方々から報告に対する感想や研究の意義を深める重要な知見をいただいた。本報告の原稿もまた、論文化に向けて動いている。そして、2023年11月~2024年2月にかけては、クィア理論入門連続公開講座の講師を担当し、全6回にわたってジェンダー/セクシュアリティにかんする講義および研究発表を行った。学外の一般に向けた講義でありながらも、ジェンダー・セクシュアリティを専門とする研究者や学生の方々にも多くご参加いただき、自身の研究を進展させる大変重要な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全体の進捗にはやや遅れが生じている。令和5年度は研究報告の機会をいくつかいただいたこともあり、インプットよりもアウトプットが中心となった。前半はインタビューを定期的に実施できていたものの、9月以降は学会報告、CGSでの研究報告、公開講座と立て続けに報告の場があり、新規のインタビューはほとんどできなかった。また、インタビューを通じて自身の研究計画を見直す必要も出ていると感じている。当初は50人程度を目標にインタビューを行う予定であったが、1回のインタビューにつきスクリプトの作成に膨大な時間がかかることや、倫理的問題に十分に配慮する必要があること、また1人に対し複数回インタビューを実施する必要が出ていることなどから、時間と労力、そして自身の研究目的を踏まえて、研究計画を見直す必要があると感じている。 これらは当初予定していなかったものではあるものの、講義や報告を通じて自身の研究目的や理論的関心などが大幅に整理されており、来年度はインプットとアウトプットのバランスを意識しながら研究に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きインタビューを継続して行いつつ、それらのデータを理解可能にするための理論的基盤の構築に注力する。また、それらの成果を論文として投稿する。また9月以降は雑誌分析を行い、博論におけるインタビューデータの位置付けを明確化する。また、その結果をジェンダー史学会で発表する。具体的には次のスケジュールで進める。新規10名へのインタビューの実施(4~8月)、精神医学雑誌・ミニコミ誌分析(9~12月)、学会発表(9月、10月予定)、学会誌への投稿(7月、10月、1月)。
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Causes of Carryover |
先に記載したとおり、今年度は当初予定していなかった報告機会が多く発生し、調査・研究に多少の遅れが生じたことに伴って繰越金が発生している。来年度は国際学会での報告を控えているため、それらの出張費にあてるとともに、遅れている分のインタビュー調査および資料の収集にあてる予定である。
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