2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of biosynthetic mechanism of diazo group-containing amino acid and the application to novel amino acid production system
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22J21180
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川合 誠司 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 放線菌 / 生合成 / ジアゾ基 / 非リボソームペプチド合成酵素 / ポリケタイド合成酵素 / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / 二次代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは過去に、放線菌が生産するジアゾ基含有アミノ酸、6-diazo-5-oxo-L-norleucine (DON) の生合成経路において、新規ファミリーの膜タンパク質であるAzpLがジアゾ化反応を触媒することを同定したが、組換えタンパク質の取得には至っていなかった。本年度はAzpLのC末端にGFPを融合させることで、大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現・精製に成功し、試験管内でその活性を確かめることができた。AzpLは既知のジアゾ化酵素と異なり、ATPなどの補因子や補酵素をその活性に必要としないことが分かり、反応機構が根本的に異なることが示唆された。 Streptomyces sp. RI-77株が有するジアゾ化反応に必要な遺伝子を含む未知の生合成遺伝子クラスター (avaクラスター) について、異種発現実験によるゲノムマイニングを行ったところ、本クラスターの遺伝子産物がアベナルミ酸を生産することが分かった。各遺伝子破壊株の代謝解析や組換えタンパク質の試験管内解析から全生合成経路を解明した。この経路には、芳香族アミノ基のジアゾ化とジアゾ基へのNADPH由来のヒドリド転移による脱離反応を介した新規なアミノ基除去機構が存在することを明らかにした。更に、ジアゾ化を担うAvaA6のホモログ酵素 (CmaA6) について、X線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡法による解析から、現在までにテトラマーを形成する全体構造を解明した。 アベナルミ酸の生合成中間体である、3-ジアゾアベナルミ酸生産菌の培養液に、アセトアセタニライドとその誘導体を添加したところ、細胞内でジアゾ基と活性メチレンが非酵素的にカップリング反応を起こし、フェニルジアゼン骨格を有する新規化合物を生産することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では難航すると考えられた、DON生合成においてジアゾ化反応を担う新規ファミリーの膜タンパク質であるAzpLの組換えタンパク質の大腸菌による発現と試験管内での機能解析に成功し、更なる機能解析の目処が立った。 また、ゲノムマイニングによりアベナルミ酸の生合成遺伝子クラスターを同定した。更に、複数の遺伝子破壊株の代謝解析、安定同位体取り込み実験、組換えタンパク質を用いた試験管内反応などから全生合成経路を明らかにし、脱アミノ化という放線菌二次代謝における新たなジアゾ化反応の役割を解明した。更に、最終年度までの達成を計画していた、ジアゾ化酵素のX線結晶構造解析による構造モデルの構築に世界で初めて成功するとともに、クライオ電子顕微鏡法による構造モデルの構築にも成功し、極めて順調に研究が進んでいる。 そして、ジアゾ基含有天然物の生体内における誘導体化という研究開始時の目標も達成し、4種のフェニルジアゼン骨格を有する新規化合物の微生物生産とNMRによる構造決定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
GFPを結合させたAzpLの組換えタンパク質の発現量と精製度の向上に取り組み、X線結晶構造解析の実施を目指す。一方で、DON生合成経路においてリジンの5位の水酸化反応を触媒する新規ファミリーの酵素AzpKのX線結晶構造解析について、分解能の向上に取り組み、全体構造と反応機構の解明を目指す。 ATP依存型のジアゾ化酵素であるCmaA6について、現在までに得られたX線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡法によるモデル構造の分解能の向上に取り組むとともに、ATPやAMP-PNPなどの基質ないし基質アナログとの複合体構造の取得を目指し、詳細な反応機構と反応に重要なアミノ酸残基の同定を目指す。 また、ジアゾ化酵素遺伝子を有する未知の生合成遺伝子クラスターについてのゲノムマイニングを開始し、新たな窒素-窒素結合含有天然物の発見や、その生合成経路の解明にも取り組む。
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