2022 Fiscal Year Annual Research Report
Unraveling the progenitors of Type Ia supernova remnants through combining high resolution X-ray spectroscopy and numerical simulation
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22J21194
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大城 勇憲 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | X線天文学 / プラズマ物理学 / Ia型超新星 |
Outline of Annual Research Achievements |
反射型回折格子を用いたIa型超新星残骸のX線観測データの解析を行なったが、親星の制限に繋がる元素組成比の推定までには至らなかった。その原因として、1)鉄族元素の中間的な電離状態(16-24階電離)をもつイオンからのL殻輝線の原子データが不足していること、2)元素組成比推定に用いるプラズマモデルと現実のプラズマの乖離があることの2点が挙げられる。 そこで当初の計画に加えて、核融合科学研究所(NIFS)にてプラズマ分光実験を実施し、そのデータの解析を行なった。NIFSの実験装置の1つであるLarge Helical Device(LHD)では、超新星残骸と同程度の温度をもつプラズマを安定して作ることができるため、このプラズマに超新星残骸に存在する鉄族元素(Fe, Mn, Ni)を注入することで、様々な電離状態をもつイオンからの輝線放射とプラズマの電離状態の時間発展を調べることができる。今回はLHDマンガンとニッケルをの注入実験を行い、さまざまな電離状態をもったイオンからのL殻輝線放射を分光し、各輝線の中心波長や放射率を測定した。その結果、L殻輝線の強度比が理論から予測される比よりも小さいことが明らかとなった。以上の結果は国際学会で発表し、査読付き論文として受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
掲げていた計画に加えて核融合科学研究所のプラズマ分光実験のデータ解析を行うこととなったが、この解析を通じてプラズマからのX線放射過程のモデリングに関する知識や技術を習得できた。これらを活用することで超新星残骸のプラズマ放射を予測するモデルの開発がスムーズに進んだ。 現在は超新星残骸の衝撃波で加熱された物質の熱交換と電離過程を同時に解き、そのプラズマ放射を予測するモデルの開発がほぼ完了しており、天体への適用も可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
衝撃波で加熱された物質の熱交換と電離過程を同時に解くことでそのプラズマ放射を予測するモデルを開発する。このモデルは従来用いられてきたプラズマ放射モデルのアップデート版に対応するため、X線スペクトル解析への直接的な適用が可能である。モデルの開発が完了し次第、既に存在する超新星残骸のX線観測データへ適用し衝撃波速度や元素組成比の制限が可能か検証する。 2023年度下期には超新星から残骸までの流体の進化を解く部分を開発することで、爆発から残骸までをシームレスに計算する流体数値計算モデルを構築する。これらの計算と観測結果との比較を行ことで、親星の質量や中心密度、星周物質の有無を明らかにする。
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