2023 Fiscal Year Research-status Report
トーラス状ハイドロゲル微粒子による新たな血管内局所療法の創製
Project/Area Number |
22KJ1053
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松宮 和生 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | ドラッグデリバリーシステム / ハイドロゲル / 微粒子 / 数値計算力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,非アルコール性脂肪肝炎由来の肝硬変の治療は対症療法が一般的である.微粒子を血管に留置する局所療法は疾患部位で直接薬物放出を可能にするものの,血流の閉塞による副作用が重篤な問題である.トーラス状の微粒子を留置することにより,血流を遮断せずに薬物を放出することが期待される.本研究では,肝硬変の治療を目的とした血管内に薬物徐放担体を直接留置するトーラス状ハイドロゲル微粒子(TSMs)の開発を目指している. 本年度は,作製したTSMsを生体内に入れた際にどのように粒子が変形しながら流動して,塞栓するのかを明らかにするため,数値流体力学(CFD)シミュレーションを用いて,TSMsの流動状態の計算を実施した.本研究は東京大学工学系研究科の高木研究室と大阪大学基礎工学研究科の杉山研究室との共同研究である.TSMsは粘弾性固体であり,流れによる圧力と粘性応力,粒子の弾性応力によって時々刻々と粒子形状が変化することから流体と固体の支配方程式を同時に解く流体構造連成(FSI)を計算に採用した.メッシュの再生成が不要であるEulerian-EulerianのFSIを有限体積法で実装し,矩形管内にTSMsを配置してソルバーの検証を行った.今後,本ソルバーを使用して,様々な流路や条件で計算を行い,マイクロ流体デバイスを用いて実際の粒子の流動状態との比較を行う予定である. これまでの成果と今年度の成果は国内で合計4つの学会,研究会,シンポジウムで報告した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は(1)粒子の作製と物性評価,(2)粒子内における薬物の放出挙動の解明,(3)実験動物を用いた治療効果の検証,(4)数値流体力学を用いたTSMsの流動シミュレーションの4つから構成される.本年度は(3)の動物実験を行う予定であったが,大学の所属変更に伴う申請の問題により,(4)の粒子の流動シミュレーションに注力した.トーラス粒子の流動シミュレーションに関しては,オープンソースCFDツールキットのOpenFOAMを用いることにより,粒子の物性値を加味したシミュレーションが可能となった.
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験に関しては,上記の理由に伴い,より簡便な評価モデルと細胞の脱細胞化技術を用いたex vivo観察モデルを用いることにより,シミュレーション結果との整合性を確認する.また,リポソームナノキャリアを用いた新規トーラス粒子を作製し,その物性や薬物放出特性を評価する.また,2種類の細胞種を用いたin vitro慢性炎症モデルを作製し,その治療効果を評価する予定である.
|
Causes of Carryover |
本研究で必要とした試薬が当研究室の別の研究でも使用することから、当研究室の異なる研究費で購入した為である.次年度使用額は次年度中に必要な試薬や機器に使用する予定である.
|