2022 Fiscal Year Annual Research Report
新機構に基づく世界最小のスキルミオンを伴う物質の開拓とダイナミクスの解明
Project/Area Number |
22J21430
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉持 遥人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | スキルミオン / 物質探索 / 磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では近年提唱された新しいスキルミオン形成機構である、遍歴電子が媒介する相互作用に基づく機構に着目し、スキルミオン候補物質を集中的に開拓した。 本年度は、現在バルク物質で世界最小のスキルミオン径を実現しているGdRu2Si2の類縁物質であるGdRu2Ge2を対象として研究を行った。磁化測定及び電気輸送測定の結果、本物質では2種類の異なる磁気相においてトポロジカルホール効果を観測した。次に、各磁気相における磁気構造を特定するために、中性子散乱実験及び共鳴X線散乱実験を行い、詳細な磁気構造解析を行った。その結果、本物質では楕円形スキルミオンやメロンアンチメロン対、円形スキルミオンを含む直径2.7 nmのナノサイズの多彩なトポロジカル磁気粒子が実現していることを発見した。その上、遍歴電子が媒介する相互作用に基づく理論計算によって、これらの多彩なトポロジカル磁気粒子の形成機構を突き止めた。 続いて、2種類のスキルミオン物質の間の混晶系であるGdRu2(Si,Ge)2を対象として、各種物性測定を行った。磁気特性及び電気輸送測定、共鳴X線散乱実験によって磁気構造の同定に成功し、本物質群では合計3種類の多様なスキルミオンが発現することを明らかにした。その上、遍歴電子が媒介する相互作用のフラストレーションに基づく理論モデルによって、空間反転対称性を有する正方格子系におけるスキルミオンの形成機構を統一的に説明することに成功した。本成果は、ナノサイズの極小スキルミオンを実現する上での新しい物質開拓指針を打ちたてる画期的な成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、空間反転対称性を有する新規正方晶物質GdRu2Ge2において、楕円形スキルミオンやメロンアンチメロン対、円形スキルミオンを含む直径2.7 nmのナノサイズの多彩なトポロジカル磁気粒子を発見することに成功した。その上、混晶系であるGdRu2(Si,Ge)2においても研究を進め、本物質群では合計3種類の多様なスキルミオンが発現することを明らかにした。その上、遍歴電子が媒介する相互作用のフラストレーションに基づく理論モデルによって、空間反転対称性を有する正方格子系におけるスキルミオンの形成機構を統一的に説明することに成功している。以上の結果は、国内外の学会で高い評価を受けている。 一方で、時間分解磁気光学測定に関しては外的なノイズを低減するために調整を進めている段階であり、今後新機構型スキルミオンの集団励起モード観測を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、上述したような正方晶物質における多彩なスキルミオンを発見したことに加え、正方晶とは異なる結晶構造に属する新たなトポロジカル磁気構造の候補物質を発見している。今後は散乱実験等によって、磁気構造の同定を進めていく予定である。また、時間分解磁気光学測定に関しては外的なノイズを低減するために光学系を改良している段階であり、物質開拓によって発見した新しいスキルミオン物質における集団励起ダイナミクスを詳細に明らかにしていく。
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