2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J21619
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 耕平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 維持過剰分解 / 熱力学的不確定性関係 / 熱力学的速度限界 / 最適輸送理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の理論の,化学反応ネットワークとマルコフジャンプ系という類似の系(離散系)への拡張という点がまず重要な研究の目標であった.これに関して私は,共同研究者らと共に次のような成果を得た.まずはじめに私たちは,エントロピー生成の幾何学的な分解や,そこから従う熱力学的な不等式が,実際にこれら離散系に対して拡張可能であることを証明した.加えて,最適輸送理論と呼ばれる数学的手法の離散系への拡張も,既に数学者によってなされていたものの物理的な意味を明らかにし,連続系(=連続自由度で記述される系)の場合と同様に熱力学第二法則の精緻化をもたらすことを明らかにした.さらにこれらの研究によって,連続系と離散系の間の一貫した対応関係を発見することができた.結果として,ミクロな連続系の熱力学の背景にあることが知られていた幾何学的な構造が,より一般に議論可能であることが判明した. 幾何学とはものの形の学問であるが,そこでは長さの概念が重要になる.長さの間には,短い長いといった自然な不等式関係が現れ,これが結果的に熱力学的な制約をもたらすことになる.本研究はそのような幾何学の力が,これまで知られていたより広範な物理系のクラスにおいて有効であることを明らかにしたといえる. 今後は連続系と離散系を結びつけるために導入された新規の物理量の意味を考察することや,幾何学と熱力学の関係がどこまで広げていけるのかを調べていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連続系と離散系の間の対応構造を明確にし,結果としてエントロピー生成の分解にとどまらず,エントロピー生成の幾何学とも呼べるような実体に迫ることができた.とはいえ,これは当初より想定していた範囲の結果であるため,評価は(2)とする.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画において,今後は化学反応ネットワークへの数値的なアプローチをとることが予期されていたものの,この頃の研究の結果を踏まえたところ,見る方向を変えて,流体系において普遍性の拡張を続けることに集中したいと考えるようになった.流体系もまた化学反応ネットワークと同様に,現在の熱力学理論において最も注目を集める概念である「ゆらぎ」を持たない記述が高い有効性を持つ.しかしながら,我々が既に示した通り現代的な熱力学理論の枠組みは,ゆらがない系においても有用である.そこで,今後は「エントロピー生成の幾何学」が流体系においても存在するのか,したとしてどのような知見をもたらすのか,ということを明らかにしていく.
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Research Products
(4 results)