2022 Fiscal Year Annual Research Report
普遍文法における文の定義とその応用に関する理論言語学的研究
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22J21631
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 一創 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 文 / 生成文法 / 言語脳科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、6月18日・19日開催の日本言語学会第164回大会の公開シンポジウム『言語脳科学が切り開く言語学の未来』において、「理論言語学者が見た言語脳科学」と題した発表を行い、文の概念を研究する上で欠かせない理論言語学における脳科学との学際的視点について議論した。また、8月20日開催の第120回九州大学言語学研究会において、「言語脳科学における『良質な成果』とは何かー理論言語学者の視点からー」と題する発表を行い、言語学と脳科学の共同研究に関するより発展的な議論を行った。さらに、2019年に私が共著した論文(Tanaka et al. 2019. Frontiers in Psychology)を発展させ、fMRIを用いた脳画像イメージングによってヒトが扱える統辞構造にどのような制限があるのかを明らかにする実験的研究を行い、現在レビューを受けている。 また、より基礎論的な研究も併せて進めている。統辞論においては、Chomsky (1955)などの基礎論的文献を批判検討することで、統辞論の還元主義的・分析的システム構成には大きく改善する余地があることを見出した。また、Sheehan et al. (2017, MIT Press)をはじめとする言語普遍性に関する文献の読解を通じて、システム構成の改善において説明すべき重要な普遍性を抑えることに努めた。また、Maturana and Varela (1980,1987)をはじめとするシステム論関係の文献や、生物学・認知科学関連の文献を渉猟することで、学際的視点に基づく文概念の研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、当初想定していた従来の生成文法に基づく文概念の導出から、システム論的観点に基づいた文概念の説明へと方向性が変わったが、後者の方向で興味深い成果が出てきそうであることは本年度の研究で明かにできた。また、主に言語脳科学に関連する領域において、当初予定していたように学会発表を行い、自分の研究成果を公にすることが出来た。よって、研究は現在までおおむね順調に進捗していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度にある程度完成させたシステム論の観点からの文概念の説明を実際の分析に応用することが重要になる。また、そうした統辞論内部の研究のみならず、言語脳科学をはじめとする学際的研究についても、論文の形で発表していくつもりである。
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