2022 Fiscal Year Annual Research Report
国境を越えたリプロダクティブ・ケア-20世紀チェコにおける制度形成過程の分析
Project/Area Number |
22J21718
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 泰菜 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 国境を越えたリプロダクティブ・ケア / チェコ / 卵子提供 / 代理出産 / 歴史社会学 / 制度論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、今日の欧州において「国境を越えたリプロダクティブ・ケア(cross-border reproductive care: CBRC)」の中心地となっているチェコにおいて、代理出産に関する法制度が不在である理由を、制度形成過程の分析を通じて明らかにしようとする。 実施計画では、2022年度上半期は日本で入手可能な資料を収集・分析し、国外にあって入手困難なものについては資料名と所蔵先の一覧表を作成する予定であった。下半期からはチェコのカレル大学に一年間留学し、上半期に作成した一覧表に基づいて必要資料の収集を行う計画であった。 カレル大学への留学は次年度に持ち越したが、研究奨励費を用いてのチェコ現地での資料収集は叶ったため、本年度は概ね研究計画通りに研究を進めることができた。 6月には東欧史研究会にて、「なぜチェコが「国境を越えたリプロダクティブ・サービス」の中心地なのか:20世紀の人口統計学的変化と生殖技術関連制度の形成」と題する報告を行った。8月から10月にはチェコ現地にて文献調査を実施した。文献調査をもとに6月の報告を発展させたものを『科学技術社会論研究』に投稿し、掲載が決定した。これらの研究成果は、チェコがCBRCの中心地と化している現状を歴史的・制度的観点から分析したものであり、本研究の根幹をなす。また、チェコでの調査で得られた資料をもとに、2月には「チェコのフェミニズム:1989年以後の動向」という口頭発表を東京工業大学科学史・技術史・STS研究会で行った。これは次年度以降、代理出産の制度形成プロセスを分析するための足掛かりとなっている。加えて代理出産に関する制度の不在を「無知」の視点から捉えられるのではないかという期待から、無知学や非知の社会学についても研究し、科学史学会でシンポジウムを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カレル大学への留学は次年度に持ち越したものの、それ以外については概ね当初の実施計画に即して研究を遂行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
6月から3月までは、チェコのカレル大学にて客員研究員として研究調査を行う。チェコにおいて代理出産に関する制度が不在である理由を明らかにするという目的に向けて、メディアや学術誌、国会における生殖技術に関する議論を収集・分析する。その際には、議論の主要なアクターとなるフェミニストや医師、カトリック系政党の議員たちの主張にとりわけ着目し、チェコにおけるフェミニズムや医学、宗教の社会的位置付けについても調査する。また、生殖技術に関する現行制度が有するアクター拘束性を分析するため、チェコの不妊治療クリニックにおいて医療人類学的調査を実施する方針である。これについてはカレル大学のエマ・フレシャノヴァー助教授に研究指導を受ける予定である。
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