2022 Fiscal Year Annual Research Report
刺激応答性セルロースナノファイバーの定量的な設計方法の確立と高機能医薬品への展開
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22J21868
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木田 兼仁 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / エマルション / 表面修飾 / 表面自由エネルギー / 逆相ガスクロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
表面修飾を施したセルロースナノファイバー(CNF)は、球状に包み込んだ薬剤を特定の条件で放出する「刺激応答性」を持ち、ターゲットとする部位でのみ薬剤が放出される機能性医薬品への実用化が期待されている。理想の条件で薬剤を放出するためには、薬剤ごとに異なる修飾基を導入する必要がある。しかし、刺激応答性のメカニズムは未解明であり、修飾基を設計するプロセスが場当たり的なものとなっているため、実用化に遅れが出ている。そこで本研究では、界面化学的な手法とシミュレーションを用いてpH・温度変化による不安定化の程度を定量的に評価することで、刺激応答性の発現機構を解明し、CNFを用いた薬剤の実用化を目指す。 今年度は、不安定化を評価する界面化学的な手法について、その条件の最適化を行った。CNFの表面自由エネルギーを逆相ガスクロマトグラフィー (IGC) で測定し、水/油の表面自由エネルギーと、CNFの繊維長・繊維半径と合わせることで、CNF安定化エマルションの安定性を測定することができる。IGC測定において、最適化した6種類の溶媒ガス(非極性溶媒としてヘキサン・ヘプタン・オクタン・ノナンを、極性溶媒としてジクロロメタン・トルエンを選択)を使用して得られたCNFの表面自由エネルギーは、その後のエマルションの挙動と一致する正確なものであった。一連の研究結果を、国際学術誌 “Langmuir” にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従った進度で研究が進んだうえ、ポルトガルで行われた国際学会への参加、および国際学術誌への論文発表によって、研究成果の発信を行なったため。以上より、研究活動およびアウトリーチの両面において良好に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、セルロースのC6位水酸基をカルボキシ化した「TEMPO酸化CNF」を対象に、CNFの表面構造と界面吸着能の関係を明らかにする手法を確立するものであった。この手法は他の物質にも応用可能なものであるため、セルロース内の水酸基をリン酸化した「リン酸化CNF」も研究対象に含め、より広範な系における刺激応答性の発現機構の解明を目指す。
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Research Products
(3 results)