2023 Fiscal Year Research-status Report
浮遊性多毛類の多様性の把握とその形成メカニズムの解明
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22KJ1091
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飴井 佳南子 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 浮遊性多毛類 / オヨギゴカイ科 / 系統地理学 / 海洋漂泳区における多様化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は浮遊性多毛類の地球規模の種多様性の正確な把握を目指している。全球規模のサンプルからの選別および計数が完了しており、オヨギゴカイ科が最も広範囲かつ数的に優占していた。2年目はサブテーマ①である浮遊性多毛類の分子系統地理について、測点を全球規模まで拡大し、解析を進めた。前年度から優先して解析を進めていたオヨギゴカイ科については、本研究にて得られた太平洋、インド洋および大西洋をカバーする計349個体のmtCOI配列とGenBankおよびBOLD上の配列データを合わせて系統解析を行った。得られたmtCOIクレードは核DNAの28S領域やゲノムワイドな一塩基多型解析の結果によって種境界が支持されており、本研究では種境界が認めれたmtCOIの遺伝的距離約2.4%を基準にオヨギゴカイ科の便宜上の種単位OTUを決定した。 その結果、35OTUと19のシングルトンが得られ、少なくとも35種の存在が示唆されている。本科について推定されている約60種と比較すると少ないが、これは形態分類学知見の混乱や本研究が採集深度以深および極域などを網羅できていないことが理由として上げられ、複数の要因が合わさった結果である可能性が高い。一部の種は異なる海盆や海洋環境に跨る全球規模の分布を示す一方、多くの種は局所的な分布を示し、水温や一次生産などを含む特定の海域の環境に適応している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集団遺伝解析と同時に進めている他の科についての顕微鏡下における観察および配列の取得が遅れている。 幾つかの属について配列の増幅ができていないが、プライマー設計に着手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
オヨギゴカイ科について得られた成果は現在論文投稿へ向け執筆中である。 オヨギゴカイ科の全球規模の分布を示した種については引き続きMIG-seq法を用いて集団レベルの違いについて解析を進めている。 生態学的違いが浮遊性多毛類の多様化プロセスにどのように影響を与えるかを明らかにするために、異なる生態を持つ他の浮遊性多毛類の科、サシバゴカイ科(Phyllodocidae), ユメゴカイ科 (Lopadorrhynchidae), ヤムシゴカイ科 (Typhloscolecidae) についても同様にmtCOI配列および形態データの取得を行っている。これらの全球規模の生物地理については、まずプライマー設計を行い、増幅可能な条件を錯誤した後、各科について全球規模のmtCOI領域の増幅を進める。大西洋サンプルはおおよそ解析が終わっているので、インド洋および太平洋のサンプルを進める予定である。
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