2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J22097
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山城 皓太郎 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 一次体性感覚皮質 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究の目的は、神経活動からの体性感覚の解読、および環境変化を経験することによる体性感覚の可塑的変化の検証である。これに取り組むにあたり、末梢から送られてきた情報を処理する、一次体性感覚皮質(s1)の神経活動を記録し、深層学習を用いて異なる体性感覚に対する神経活動を解読する。さらに、神経活動を学習した深層ニューラルネットワークを用いて、経験による体性感覚の神経可塑性を検証する。2022年度においては、ラットのS1から広範囲に電気生理学的記録を取得すること、また取得したデータを深層学習を用いて解析することに成功した。 まず、ラットのS1からの記録については、3Dプリンターで作成したボディとニクロム線を組み合わせ、独自に剣山状の電極を作成した。この電極を用いることで、ラットS1から神経活動の記録した。また、ラットの脚の動きを側面から常に撮影するために、カメラの前にラットを固定して床が動くトレッドミル記録計を立ち上げた。 これらの実験系を用いて、ラットのS1の神経活動と、その時のラットの脚の動きを対応させたデータを記録した。このデータを、ラットの前脚が床に触れる前後200ミリ秒の神経活動を深層学習モデルに学習させたところ、その時ラットの前脚が触れている床の材質を80%の精度で予測することができた。この結果は、申請書の2年度目に記載していた通りの内容であり、計画通りに計画が進んでいることを示している。 ラットの神経活動を学習した深層学習モデルの学習過程の可視化を行ったところ、ラットの前脚が床につく直前のタイミングに注目して分類を行っていることが分かった。この結果は、従来の周波数解析といった線形解析手法では得られない結果であり、深層学習を解析に導入したことで得られたものである。今後は、深層学習モデルが重要と判断したタイミングに着目し、どのような特徴がそのタイミングに表れているかを解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請研究では、一年度目にラット一次体性感覚皮質(S1)からの記録、二年度目にラットS1の神経活動の深層学習を用いた解析、三年度目に学習した深層学習モデルを用いた、視覚遮断といった環境変化が体性感覚に与える影響の検討を計画していた。 現在の研究状況では、一年度目に作成する予定であった多チャネルの1024チャネル電極を作成することはできなかったが、32チャネルの電極を作成した。深層学習モデルの学習には多くのデータがあることが理想だが、32チャネルでも十分な情報の神経活動が記録できると判断したため、以降は当初の予定とは異なる32チャネルで記録を進めている。ここまでが一年度目の目標であったが、今年度中に深層学習モデルによるラットS1の神経活動の解析まで達成している。これは、当初の予定よりも早く研究が進んでいることを示しており、順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、ラット一次体性感覚皮質(S1)からの記録、また深層学習を用いた解析まで行っている。現段階では、目標としている個体数のデータは未取得であるため、まずは目標の例数を達成することを試みる。 次に、目標例数から神経活動を記録できたとし、深層学習モデルを用いた体性感覚の可塑的変化について検証を行う。神経活動を学習した深層学習モデルを用いて神経活動から特徴を抽出し、体性感覚の表象を可視化する。これにより、体性感覚刺激を受容したときの神経活動を、2-3次元空間(低次元空間)の点として表現できる。環境変化の経験前、経験中、経験後において、神経活動を表す点のクラスターを定量することで、S1の神経可塑性を検証する。具体的な環境要因として、視覚情報の有無が体性感覚に与える影響を調べる。ラットが明るい環境では区別できない粒度の紙やすりを複数種類用意する。これらの紙やすりを設置したフィールド内を、明所①(視覚遮断経験前)→暗所(経験中)→明所②(経験後)の順にラットに歩かせ、その間の神経活動を記録する。次に、深層学習モデルを用いて、明所①、暗所、明所②、の3条件の神経活動を低次元空間にプロットする。環境変化を経験する前後のクラスターを解析することで、S1の神経可塑性を検証する。視覚遮断の経験中に変化したパラメーターが、再び明所に戻して視覚が回復したときに維持されていれば、可塑性が生じたと考えられる。
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