2022 Fiscal Year Annual Research Report
海洋細菌の光利用戦略ーアンテナ色素によるロドプシンの高効率な光受容機構の検証ー
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22J22342
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 敬允 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 海洋細菌 / プロテオロドプシン / カロテノイド色素 / 集光アンテナ |
Outline of Annual Research Achievements |
西部北太平洋から分離した海洋細菌Tenacibaculum sp. SG-28を対象とし、SG-28株の持つプロテオロドプシン(以下:TsPR)のカロテノイド色素との結合能について調べた。大腸菌を用いた異種発現系を適用してTsPRをHisタグにより精製し、SG-28株の細胞懸濁液から抽出したカロテノイド色素を添加した。その後、再度精製し、吸収スペクトルを測定した。その結果、TsPRはSG-28株が産生したゼアキサンチンと結合することを見出した。また、同サンプルを用いてCDスペクトル、および励起スペクトルを測定した結果、TsPRと結合したゼアキサンチンは自身が受容した光エネルギーをレチナールに転移する、集光アンテナとして機能することを発見した。 次に、集光アンテナを備えるPRが多くの海洋細菌に共通する仕組みか否かを調べた。データベースより海洋細菌のPRのアミノ酸配列を取得し、系統樹を作成すると、SG-28株を含むBacteroidetes門のPRは単系統を形成することが分かった。さらに、PRの立体構造を情報解析を用いて予測すると、Bacteroidetes門のPRは全て集光アンテナを持つ上で必要な有窓構造を形成することを見出した。一方で他の分類群の海洋細菌のPRは有窓構造を形成しないことから、集光アンテナを持つPRはBacteroidetes門に共通する機構だと予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通り、海洋細菌分離株の保有するプロテオロドプシンが、同株が産生するカロテノイド色素と結合する事を確認し、更にこのカロテノイド色素(ゼアキサンチン)が集光アンテナとして機能する事を見出した。加えて情報解析の結果より、集光アンテナを持つプロテオロドプシンが淡水、海水問わず世界中の水圏環境に幅広く分布する事を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオロドプシンで行った実験手法を、他のロドプシン(ナトリウムイオン輸送ロドプシン、塩化物イオン輸送ロドプシン)に適用し、これらのロドプシンも同様に集光アンテナを備えるのかを検証する。
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Research Products
(4 results)