2022 Fiscal Year Annual Research Report
系統樹の空間をはじめとする非ユークリッド空間における統計的推測手法の開発
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22J22685
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高澤 祐槻 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ノンパラメトリック密度推定 / 対数凹密度 / 最尤推定 / 系統樹 / CAT(0)空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
系統樹は通常のユークリッド空間ではない複雑な空間に埋め込まれることが知られている.本年度は,まず系統樹の空間における確率分布の推定手法として,対数凹密度の最尤推定の方法についてまとめ,空間が2次元以下の場合において開発した計算アルゴリズムを実装し,公開した.また,3つの半直線が原点でつながった空間は3種の系統樹の空間に対応することから,有限個の半直線から構成される空間での確率密度推定の問題についても検討した.その結果,ある単純な遺伝子樹のモデルや標準的な確率過程のモデルから自然に導かれる確率密度関数は原点で折れ曲がる挙動を示すため,本研究で扱う対数凹性という形状制約を全体では満たさないことを確認した.そこで,この折れ曲がりの形状を許すような対数凹性の仮定の緩和法を提案し,その下でも最尤推定が可能であることを示した.これらの内容をまとめた論文は現在投稿中である.さらに,非正な曲率を持つより一般の空間として多面体複体や象限空間を考えても,同様の条件下で対数凹最尤推定が可能であることを示した. さらに,この推定量の性質やパフォーマンスを調べるため,対数凹最尤推定量を一般化した概念である対数凹射影について,数学的,統計的な性質を非正曲率の象限空間において調べた.具体的には,任意の確率密度に対するその対数凹近似の存在性についての条件を導いた.また,対数凹近似を与える写像の連続性の性質について調べることで,最尤推定量の一致性の条件も導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低次元の場合における系統樹の空間での最尤推定アルゴリズムを実装し公開した.最尤推定手法のパフォーマンスは数値的に既存手法と比較した.当初予定していた高次元の場合へのアルゴリズムの拡張には至らなかった一方で,最尤推定量を一般化した概念である対数凹射影について,存在性の十分条件をCAT(0)象限空間において示すことができた.また,最尤推定量の一致性の性質に関しても導いた.
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Strategy for Future Research Activity |
対数凹最尤推定量の収束レート等の理論的性質の解明を進める.また,高次元のデータにも対応できるよう,より制約的な形状制約の導入を考え,推定可能性の考察とアルゴリズムの開発を行う.
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