2023 Fiscal Year Research-status Report
Historical Study on the Word Order of Danish: From the Perspective of Historical Syntax and Language Contact
Project/Area Number |
22KJ1135
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 貴也 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 初期近代デンマーク語 / 歴史統語論 / 語順変化 / 言語接触 / ドイツ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、前年度の方針に引き続き従い、資料の調査を進めた。具体的には、実際に資料のテキストにあたり、語順のバリエーションを定量的に調査した。とりわけ、副詞・定動詞の位置関係と、OV/VO語順という2つの観点から調査した。この際、資料のジャンルの違いによる明確な語順の違いが見られた。また、これらに関して、ドイツ語の影響を受けた可能性がどれほどあるかということを考察した。この内容の一部は、日本言語学会第167回大会にて発表した。この結果を踏まえ、更なる観点からの調査が必要であると考え、その観点からの調査も進めている。具体的には、主語や目的語となっている名詞句の性質 (定・不定など) や、定動詞の種類 (一般動詞か助動詞かなど) といった観点である。これらを体系的にまとめ、言語接触の影響にも触れつつ、初期近代デンマーク語資料の語順について記述を進めている。 なお、令和5年度は所属先の東京大学にて、前年度の大阪大学での経験を活かしながら研究活動を進めた。そして、国内でいる間に並行して準備を進め、2024年2月より研究指導委託制度を利用してデンマークのオーフス大学で研究活動をしている。研究では初期近代デンマーク語が対象であるが、幅広い先行研究へのアクセスや資料の理解などといった点で研究に必要な現代デンマーク語の知識や運用能力を高めることができている。そして、日本で入手できなかった文献や資料を収集したり、オーフス大学のデンマーク語学の専門家に指導を仰いだりして、研究を進めている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特定の時期の統語論 (語順) の変化について、資料のジャンル等についても考慮しながら網羅的に調査し、記述するという研究の性質上、扱う資料の量が多く、データを収集するのに時間がかかる。それでも、データ収集は概ね順調に進めることができているが、前年度の少々の遅れを完全に取り戻すまでは至らなかった。また、2024年2月からの海外渡航へ向けての準備に少し時間を割く必要もあった。以上のことから、予定よりやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度も引き続き、(a) デンマーク語の語順の変遷を時代ごとに網羅的に記述し、(b) 言語接触という観点から、デンマーク語と関わりの深い言語の語順を調査し、語順変化における他言語の影響を調査する。(a) に関して、必要に応じてデンマーク国内での文献収集を行いつつ、コーパスの利用や文献の精読を通じて量的側面・質的側面の両方からデンマーク語の語順について調査し、記述を行う。前期新デンマーク語 (1500-1700年頃) を対象として、選出した当該時期の資料のうち未調査のものを引き続き調査する。節内における名詞句や動詞の種類、ジャンル間の相違といった点に注目しつつ記述を進める。(b) に関して、ドイツ語の影響を調査する。ハンザ商人が活動していた14~16世紀頃に影響力を有していた中世低地ドイツ語に加え、前期新デンマーク語の時期に特にデンマーク語に影響を与えたと見られる高地ドイツ語が、語順変化において何らかの役割を果たしているのか、そうだとしたらどのように影響を与えているのか、ということについて調査する。そのため、当時のドイツ語の統語論についての先行研究をも参照しつつ、実際のドイツ語文献も必要に応じて調査する。言語接触による言語変化に関しては先行研究の蓄積があり、参照しつつ考察を加える。 その上で、語順変化を分析して言語内的観点からまとめ、変化の要因として考えうる可能性をそれぞれ検討しつつ、語順変化のメカニズムを総合的に解明する。これに関して、(a), (b) の調査結果を用い、検討を行う。
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Causes of Carryover |
2年連続の研究費として支給されており、今年度 (令和5年度) 分のごく一部が次年度使用額として残った。 令和6年度は研究指導委託による海外での研究活動により、日本で入手することが難しかった文献・資料の入手のための物品費や、学会・研究会のための旅費として用いることを計画している。また、言語調査にあたって、インフォーマントに依頼する場合、謝金として用いる。
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