2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ1141
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 航平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | 接着 / 水中接着 / 水素結合 / 疎水性 |
Outline of Annual Research Achievements |
接着剤は身の回りに数多く存在しているが、水の中で塗布から硬化まで行うことのできる接着剤の開発は非常に困難である。そこで、全プロセスを水の中で行うことのできる強力な水中接着剤の新たな分子設計指針の提案を目的とした。研究者はこれまでに光照射によって硬化する強力な水中接着剤や、2液混合型の水中接着剤の開発に成功した。2液混合型の接着剤では、これまでの光照射による接着剤の硬化方法では、光を透過しない不透明な材質の接着には適さず、実用面で問題を抱えていた。この2液混合型の接着剤は、開発した接着剤分子を架橋剤と混合することにより3次元ネットワークを構築して得られた接着剤は、強い接着性を示すだけでなく1年以上にもわたりその高い接着強度を維持することができた。さらに、一般的により困難とされている海水中においても、1年以上にわたって高い接着強度を維持した。これは、光や加熱のような特別な外部刺激を硬化に必要とせず、環境汚染の恐れのある有機溶媒などを用いずに、1年以上の優れた耐久性を実現した初めての水中接着剤である。 これらの優れた接着性能の鍵となったのは、チオ尿素が極性疎水性水素結合モチーフとして働くことを見出したことである。一般的な水素結合モチーフは、極性かつ親水性であるため、水によってその水素結合は阻害されてしまう。しかしながら、チオ尿素の水素結合は水の影響を受けにくく、熱力学的に安定であることを見出した。 本研究では、実用化に向けた優れた水中接着性能を持つ接着剤の開拓に加え、水素結合モチーフの固定概念を更新するような基礎科学への貢献も期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた耐久性や光を用いない接着剤の開発に成功しているから。 また、接着メカニズムの解明に関しても、十分に進んでいるから。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を国際論文として発表する。これらの知見を活かして、剥離可能な接着剤の開拓に取り組む。さらに、本研究を通じて見出した、極性疎水性水素結合モチーフの新たな利用例を模索する。
|