2022 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス型多孔性イオン結晶を鋳型に用いた小核金属クラスターのサイズ選択的合成
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22J23130
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原口 直哉 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 金属クラスター / ポリオキソメタレート / 多孔性イオン結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
還元されやすくクラスター合成に適していると考えられる貴金属の中で比較的安価であり、クラスター合成に関する研究が多数報告されているため、今年度は銀での小核金属クラスター合成とそのサイズ制御を試みた。クラスターが形成される場となる多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals: PICs)は還元特性を有するポリオキソメタレート(Polyoxometalate: POM)と2種類の対カチオン(金属錯イオンとPOMの余剰の負電荷を打ち消すための1価の対カチオン)から構成される。これらのPICsを構成するイオンのうち、POMと1価のカチオンのみを変更すると、結晶構造は変化せず、還元特性のみが異なる3種類の等構造な結晶が得られた。この3種類の結晶を使用し、還元反応の反応時間を調整する(還元反応が平衡到達する前に反応を停止する)ことで、PICsを構成するPOMに貯蔵される電子の数が調整可能であることが確認された。このようにしてPICsを構成するPOM中に貯蔵される電子の数を調整すると、還元したPICsを硝酸銀水溶液に浸漬し銀導入・クラスター形成反応を行う際に、POMから銀イオンへの移動電子数を制御することが可能となる。さらに、X線吸収微細構造・発光スペクトル・X線光電子分光の測定結果から形成されたクラスターの平均サイズはPOMから銀イオンへの移動電子数に対して正の相関を示した。このことからPICs中で形成される銀クラスターの平均サイズがPOMから銀イオンへの移動電子数によって制御することが可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、PICsの特性を調整し、PICsに貯蔵させる電子の数を調整することで、PICsから銀イオンへの移動電子数を制御すると形成される銀クラスラーのサイズが変化するという、PICsの特性とクラスターサイズの間の相関を見出すことができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、PICs中で形成される小核銀クラスターの平均サイズ(サイズ分布の中心)はPICsの構成アニオンであるPOMから銀イオンへの移動電子数によって制御できることが明らかになった。今後は(1)形成される銀クラスターの均質性の向上(サイズの分布幅を狭くする)と(2)他の貴金属や卑金属での小核銀クラスター合成について検討していく。 具体的には、(1)については、クラスターのサイズに分布が生じるのは結晶表面でわずかに析出している銀ナノ粒子が主な原因と考えられるので、イオン交換によりPICsの還元に先立って銀イオンを結晶細孔内部に導入した状態でPICsの還元反応を行うことで、クラスターサイズの均質性の向上が見込まれる。また、温度やpHなど反応溶液の状態を調整することでクラスター形成反応の速度を調整すると、クラスターサイズの分布が変化すると考えられるため、これらの条件を調整して、クラスターのサイズ分布の調整方法を検討する。 (2)については、これまでの研究で明らかにされた小核銀クラスターのサイズを制御する方法を他種金属に対しても適応可能か調査し、他種金属でも銀の場合と同様に平均サイズが制御された小核金属クラスター合成を検討する。
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Research Products
(4 results)