2022 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal of guidelines for antibody designing by physicochemical control of association state of membrane protein
Project/Area Number |
22J23336
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
氏家 寛 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 抗体 / 膜蛋白質 / Cadherin / TNFRSF / SPR / 蛋白質科学 / 生化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜蛋白質の多くは細胞表面上に存在しており,細胞内外の連絡手段として様々な多役割を担っており,様々な疾患治療のターゲットとして注目されている。また,抗体は脊椎動物が広く持つ天然分子であり,分子認識を高い親和性と特異性で達成できる機能を持つ。本研究では,最終的には標的蛋白質に対する抗体を治療薬として利用するにあたり,その合理的な設計指針を提案することを目指している。そのために,本年では抗体と膜蛋白質の相互作用の性質を各種物理化学的手法を用いて分子レベルで精査することに注力した。 研究ターゲットの一つ,細胞接着因子LI-cadherinについて,以前より扱っていた抗体を含む6種類の抗体について,水素-重水素交換質量分析法(HDX-MS)を用いた結合部位の特定と表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いた相互作用の速度論的解析を通じて,抗体のLI-cadherin認識の物理化学的性質を明らかにした。また,結合部位とLI-cadherin二量体界面を比較し,各抗体が持つLI-cadherinの二量体化・細胞接着に対する制御能を推察した。 もう一つのターゲットであるT細胞活性化因子OX40については,臨床試験段階にある6種類の抗体を用いた相互作用解析をSPRや等温滴定型カロリメトリ(ITC)などの複数の物理化学的手法を用いて行った。SPR解析において,チップ表面上に抗体を抗体を固定化し,OX40を流路に流す場合と,抗体と抗原を逆にして解析する場合で,相互作用パラメータ,特に解離速度定数(koff)が変化する場合があることが判明し,抗原の集合状態によって抗体の抗原結合能が変化することを示唆している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象である二つの蛋白質に対して期待以上の成果が得られた。 LI-cadherinについては既存の6種類の抗体についての解析が進み,それぞれが固有の性質を持っていることが明らかとなったことは大きい。各抗体の細胞結合能や細胞凝集の制御能,組織に対する結合様式が異なることが予想され,その違いを結合部位や相互作用パラメータで記述できることが期待される。 また,OX40のSPR解析においても今後の研究方針について極めて重要な研究成果を得られた。チップ表面に固定化する蛋白質をOX40と抗体で入れ替えたときに相互作用パラメータが変化した抗体があったことは,OX40の自由度や集合状態によって抗体の結合能が変化することを示唆しており,細胞の種類によって各抗体の結合能の優劣が変化する可能性がある。研究立案の際に問題視していた「組み換え蛋白質相互作用の物理化学的性質」と「モデル細胞表面上での生物学的活性」が直接的には一致しないという点が顕わとなり,今後は相互作用の詳細な分析を用いて,どのパラメータがどのようにして生物学的活性を説明することができるかの合理的なモデルを提案することが目標となる。モデル細胞を用いた実験では,細胞表面の標的蛋白質の存在量や分散状態も考慮し進める必要がある他,逆に分散状態について相互作用パラメータの傾向から推察できる可能性があると考えている。 一方,LI-cadherin抗体については研究室で所持していたハイブリドーマのクローニングを行ったが組み換え発現でLI-cadherinに対して結合能がある抗体を取得することはできなかった。また,予定していたX線結晶構造解析については,蛋白質結晶を得ることができず,解析には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象である二つの蛋白質に対して期待以上の成果が得られた。 LI-cadherinについては既存の6種類の抗体についての解析が進み,それぞれが固有の性質を持っていることが明らかとなったことは大きい。各抗体の細胞結合能や細胞凝集の制御能,組織に対する結合様式が異なることが予想され,その違いを結合部位や相互作用パラメータで記述できることが期待される。 また,OX40の複数の物理化学的解析のなかで,特にSPRにおいて今後の研究方針について極めて重要な研究成果を得られた。チップ表面に固定化する蛋白質をOX40と抗体で入れ替えたときに相互作用パラメータが変化した抗体があったことは,OX40の自由度や集合状態によって抗体の結合能が変化することを示唆しており,細胞の種類によって各抗体の結合能の優劣が変化する可能性がある。研究立案の際に問題視していた「組換え蛋白質相互作用の物理化学的性質」と「モデル細胞表面上での生物学的活性」が直接的には一致しないという点が顕わとなり,今後は相互作用の詳細な分析を用いて,どのパラメータがどのようにして生物学的活性を説明することができるかの合理的なモデルを提案することが目標となる。モデル細胞を用いた実験では,細胞表面の標的蛋白質の存在量や分散状態も考慮し進める必要がある他,逆に分散状態について相互作用パラメータの傾向から推察できる可能性があると考えている。 一方,LI-cadherin抗体については研究室で所持していたハイブリドーマのクローニングを行ったが組換え発現でLI-cadherinに対して結合能がある抗体を取得することはできなかった。また,予定していたX線結晶構造解析については,蛋白質結晶を得ることができず,解析には至らなかった。
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