2023 Fiscal Year Research-status Report
正確な染色体分配を保証する新たな中心体ポジショニング機構の解明
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22KJ1178
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小森 琢磨 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 中心体 / 細胞分裂 / 細胞生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心体は動物細胞小器官の一つであり、細胞分裂における紡錘体の極として機能する。これまで様々ながん細胞株を対象とした解析から、分離した2つの中心体は、核の下から核を挟むように側面へと移動して核膜崩壊を迎えると考えられてきた。その一方で、正常細胞株では、核膜崩壊時にそれぞれの中心体が核の上下に配置されることも示されている。しかし、この中心体の特徴的な配置の分子機構やその意義は全くの未解明である。本研究では、この特徴的な核膜崩壊時の中心体配置の分子機構を明らかにすることを目的とした。該当年度は以下の実験を行った。 1.核膜崩壊直前の特徴的な中心体配置を決定する関連因子の同定:昨年度に発見した、この中心体配置の主要因子と複数の細胞骨格関連因子を同時に阻害する小規模siRNAスクリーニングを実施した。その結果、複数の微小管関連因子とアクチン骨格関連因子において特徴的な配置の減少が確認された。 2.ノックアウト細胞株の樹立:得られた候補因子に対し、自身が最適化した手法であるCRISPR-del法を用いてノックアウト細胞株を樹立した。これは標的遺伝子の上流・下流をターゲットとする二種類のsgRNAを同時に導入することで標的遺伝子の全長を欠損させる方法である。これにより、候補因子の”完全なノックアウト細胞株”の作成に成功した。また、これらのノックアウト細胞株では中心体の三次元配置が優位に減少することを確認した。 3.CRISPR-Cas9を用いたゲノムワイドスクリーニングの実施:上記で作成した「中心体が三次元的な配置を取りにくい細胞株」を使用し、中心体が三次元配置をとることができない条件下で細胞生存に必要となる分子を探索するCRISPR-Cas9ゲノムワイドスクリーニングを実施した。ここでは、野生型と二種類の異なる遺伝子をそれぞれノックアウトした細胞株で実施した。現在解析を進めている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画よりも早い段階で、中心体の特徴的な配置に関与する因子が複数獲得できた。また、ノックアウト細胞の観察結果からもそれらの信頼度は十分に高いと考えられる。さらに、CRISPR-Cas9ゲノムワイドスクリーニングからは中心体三次元配置の生理学的意義を網羅的に解析できることが期待される。以上を踏まえ、このような評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
候補因子による分子メカニズムの解析を引き続き行う。また、複数の細胞株(がん細胞株・正常細胞株)を用いて同様のメカニズムが働いているのかを確認する。CRISPR-Cas9ゲノムワイドスクリーニングから見出した候補分子の中から、実際に中心体が三次元配置をとることができない条件下で細胞生存に必要となる分子を同定するために、Top20の分子全てについてのKO細胞株を作製して評価する。
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Causes of Carryover |
新たな知見が得られ、実験条件の検討をした結果、次年度使用額が生じた。次年度は更なる発展と論文執筆のために使用する予定である。
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